婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

「ではこちらで用意しておいた物をしばらくは着てくれ。明日にでも業者を手配するから、好みのものを選ぶといい」
「え、用意してあるならいらないわ。どうせ一年しかいないし」
「そうか。ではさっそく解呪するか?」
「もちろん望むところよ」

 私もベッドの上に乗り上げ、悪魔皇帝の隣に膝立ちする。無駄のない動きで悪魔皇帝が私の方に体を向けると青い海のような瞳と視線が絡んだ。

 禍々しい仮面の中で、そこだけは凛とした清浄な空気をまとっている。まるで穏やかな海のようなサファイアブルーの虹彩に惹き込まれるように見入ってしまった。

「なにかわかったか?」

 悪魔皇帝の言葉にハッと我に帰る。

 いけない、思わず見入ってしまったわ! 決して見惚れていたわけじゃないのよ! そもそもこの悪魔皇帝だってくすんだ金髪で碧眼だから信用しちゃダメなタイプだし!

 私の人生において金髪碧眼男は鬼門だった。関わると本当にいいことがない。一年といわずさっさと解呪して自由になろうと決意を固めた。

「待って、触ってみてもいい? 自分で作ったものだけど、他の人も触れてるから前とは違うみたいなの」
「ダメだ、もし目の前でのたうち回っても俺では介抱できない」
「大丈夫よ、邪念がなければ痛くならないから」

 そっと指先を仮面へ伸ばす。あの時ヤケで込めた怨念がこんな形で私の元に戻ってくるとは思わなかった。しかも私が作った唯一の呪いのアイテムなのに、なんて数奇な運命なんだろう。

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