婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
「や、約束はちゃんと守ってよ! 解呪したら私は自由になるんでしょう!?」
「ああ、もちろんだ。その前に俺の子を産むならそれでもいいが。今日はなんと言っても初夜だしな?」
「産まないわよっ! なにがなんでも解呪してやるんだからっ!!」
「くくっ、まあ、頑張ってくれ」
上から目線の言葉が腹たつわ〜! 魔女に対してこんな太々しい態度の人間なんて初めてよっ!!
しかも仮面をつけてても顔立ちの良さがわかるなんて、さらに腹たつわ〜〜!! 金髪イケメンなんて私の敵も同然なんだからね!?
「ていうか、なんで悪魔皇帝様がこんな仮面つけてるのよ?」
「悪魔皇帝か……そう呼ばれてるのは知ってるが、セシルには口にしてほしくないな」
ほんの少しだけ悲しげに目を伏せた悪魔皇帝に私の良心がチクリと痛む。思わずポロッと出てしまったけど失言だった。でも素直に謝るのもなんだか癪で、尖った返事をしてしまう。
「じゃぁ、レイヴァン皇帝陛下? ただの陛下? どっち?」
「レイ。レイと呼んでくれ」
「はああああ!? それって愛称じゃないのよ!」
「愛し合っている夫婦ならそう呼ぶだろう?」
ニヤリと笑う悪魔皇帝の顔には『仲のいい夫婦のフリをする約束だが?』と書かれている。
ついさっき痛んだ私の良心を返してほしい。