婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
* * *
俺がディカルト帝国の悪魔皇帝、レイヴァン・オブ・ディカルトと呼ばれているのは知っていた。
そう呼ばれるきっかけになったのは、実の父親でもある前皇帝をはじめ直系皇族の首をすべて刎ねたからだ。
俺が皇帝に即位したことを気に入らない貴族や、前皇帝を支持していた旧派の貴族たちが言い始めたのがきっかけだ。
前皇帝は支配力があったが、国を支える民の生活にはまるで興味がなかった。だから民から搾取するのが当然だと思っていたし、皇族のために尽くすのが民の義務だとすら思っていた。
さらに第五妃の子だった俺は子爵令嬢だった母ともども離宮に隔離され冷遇されていた。
それでも皇族として民を守るのが俺の役目だと、命令されるまま辺境の魔物討伐をこなしていた。
そんな生活だったから剣や魔法の腕はメキメキと伸びて、いつの間にか帝国最強の騎士になっていた。魔物討伐のついでに助けた村人や街人、それから一部の騎士たちが俺を慕って部下になり支えてくれた。