婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
そんなある日、俺は運命の女神に出会った。
二年前のことだ。当時の俺は魔物討伐の命令を受けて、国境沿いの街へやってきていた。すでに街の中にまで魔物が入り込んでいて混戦状態だった。
この状況を打破しないと魔物によって街が消えてしまうのに、その時の俺に状況を打破するほどの力はなかった。そこで街を守るために呪われた武器を使ったが、代償として魔力を根こそぎ吸われて死にそうになっていた。
『解呪の魔女様、お願いしますっ! 我らにとって大切なお方なんです! どうか、どうか助けてください!!』
ブレイリーが必死に探して連れてきたのは、最近よく噂を耳にする解呪の魔女だった。イリアスが何度も何度も頭を下げている。
朦朧とする意識の中でこんな必死なイリアスは貴重だなんて考えていた。つまりそれほど切迫した状況ということだ。
俺についてきてくれた部下たちには悪いが、ここまでなのかもしれないと覚悟を決めた。
『わかったから静かにして。集中できないわ』
声の方へ視線を向けると、そこには確かに魔女がいた。
漆黒の艶髪はサラサラと風になびき、真紅の瞳はなにかを追いかけるように睨みつけている。透き通るような白い肌が日の光を受けて彼女自身が輝いているようだった。
俺の目には、彼女がまるで女神のように映っていた。