婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

「それじゃぁ、とりあえず二メートル四方で用意してもらえる? 場所をもらえるなら、他にも育ててみたい薬草があるの」
「わかった、手配する。……他に必要な物はないか? 不足があるなら用意するから言ってくれ」
「うーん、今のところないわ。今日の解呪はどうする? お仕事の前に済ませるなら、この後やるわよ」
「ああ、頼む」

 朝食を食べ終わり、ソファーに腰かけたレイの前に立つ。昨夜と同じように仮面の淵に触れながら、丁寧に呪いを調べていった。絡まる糸を切れないように解いていくような作業は骨が折れる。

 その間は仮面をじっくりと眺める必要があり、嫌でも深い海のような青い瞳と視線が合った。なんだかソワソワと落ち着かなくて、早めに切り上げたのだった。



 それからレイは毎日、昼食後に私の私室までやってきた。

 いつも決まってレイがソファーに座り、私がその前に立って解呪を進める。今日もコバルトブルーの瞳が私を射貫くように見つめていた。

「……ねえ、そんなに見つめられたら作業しにくいんだけど」
「目の前にいるのだから仕方ないだろう。気にするな」
「いや、気になるから! 集中しないといけないのに、作業の進みが遅くなるじゃない」
「俺は別に呪いが解けなくても問題ないが」
「私が問題おおありなのよっ!!」

 この余裕たっぷりな感じがムカつくわー!
 一年。タイムリミットは一年なんだから、急がないといけないのに、なんで邪魔するのよ……! この視線さえなければ……あ、そうか、目を閉じてもらえばいんじゃない?


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