婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

「わかったわ、じゃぁ、目を閉じて」
「なぜだ?」

 仮面に隠れてわかりにくいけど、少し眉根を寄せてるみたいだ。私が魔女だから、なにかされると警戒しているかもしれない。

「気が散って作業が進まないから、目を閉じてほしいだけよ。なにもしないわ」
「そうか……それならセシルはこっちに座ってくれ」

 そう言ってレイはソファーの反対側へと私を促す。しかしそれでは体勢的に少々きついのだ。

「私は立ってる方が作業しやすいんだけど」
「それなら目は閉じない」
「は? なに子供みたいなこと言ってるの?」

 レイはまったく譲る気がないようで、早くソファーに座れとポンッと座面を叩く。視線がなくなれば作業も捗るかと、渋々ソファーに腰を下ろした。

 私が座るや否やレイは横になり、なんと膝の上に頭を乗せた。

「んなっ! なにしてんのよっ!?」
「膝枕だ」
「だから、なんで私が膝枕なんてしなきゃいけないのよっ!!」

 なにをさも当然と言わんばかりの顔で言ってるんだ、この悪魔皇帝は。解呪するのに膝枕する必要がどこにあるというのだ。


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