婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
「いいか。セシルが解呪している間、この体勢なら俺はセシルの希望通りに目を閉じて、しかも仮眠を取ることもできる。さらに誰かが来てもイチャついてる夫婦にしか見えない。一石三鳥だ」
ドヤ顔で話すレイにムカつきながらも、効果的な反論が見つからない。解呪の時間を捻出するためにハイペースで公務をこなし、疲れている様子なのはよくわかる。少しでも仮眠を取りたいのだろう。
私も鬼ではないから、最近は疲労回復の効果のある薬草を育て始めた。でも。
「いやいや、そんなドヤ顔で言われても納得できないわ」
「セシル」
急に真剣な眼差しを向けられて、ドクリと心臓が跳ねた。
「すまない、もう……」
その言葉を最後にレイは瞳を閉じて、私の太ももにズシリと重みが増す。
悪魔皇帝は無防備な寝顔を晒して寝息をたてはじめた。こんな瞬間的に眠りに落ちる特技があるなんて聞いてない。しかも気持ちよさそうに眠っていて、叩き起こすのは忍びないと感じてしまった。
「どれだけ自由なのよ……」
仕方がないのでそのまま解呪の作業を続ける。時間になってイリアスが迎えにくるまで私の膝枕でしっかりと仮眠を取り、とてもスッキリした顔でレイは執務室に戻っていった。
それから解呪の時間は膝枕がデフォルトになったのに頭を抱えた。