婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
目の前の現実が受け入れられなくて、ただただ呆然としていた。
やや遅れてシャロンをエスコートしてきた父がやってきて、珍しく私に声をかける。
「セシル、エルベルト様の婚約者でなくなったお前はマックイーン家の恥さらしだ。このまま親子の縁を切る」
父は到底家族と思えない冷たい眼差しで私を見下ろしていた。兄に視線を向けても俯いているだけで、助けてくれる気配はない。兄だけは私を無視しなかったから、もしかしたらと思ったけど父には逆らえないのだろう。
正面から向けられるエルベルト様の敵意と、シャロンの勝ち誇ったような顔、父のゴミでも見るような冷たい眼差しに、目の前が暗くなっていく。
「それに、お前はこともあろうか得意の闇魔法で魔女の真似をしてシャロンに呪いをかけただろう!」
「え……? そんな、そんなことしていませんし、出来ませんわ!」
「嘘をつくな! お前に呪われて、苦しんでいたシャロンを救ったのは私なのだ! あのような卑劣な方法で……心の醜い偽魔女めっ!」
エルベルト様の言っていることが本当に理解できなかった。