婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
今日の解呪の作業が終わり集中していた意識を仮面から外した。窓から差し込む陽の光がレイを優しく照らしている。私の黒髪とは対照的なアッシュブロンドの髪はキラキラと輝いて綺麗だった。
あまりにも綺麗で思わず手が伸びた。
耳の上で短く切られた柔らかい髪は、少しクセがあるのにサラサラと指からこぼれ落ちる。仮面にかかっていた前髪をそっと後ろへ流した。
仮面が外れれば、きっと皇后にふさわしい令嬢を妻にするのだと思う。私はあくまでも代替に過ぎないのだ。こんな風に距離を縮めても、契約で結ばれただけの関係だ。もし呪いが解けなくても後継者を産んだら用済みになる。
だから、心を許してはいけない。
たまに勘違いしそうになることを言われたとしても、それは皇帝の後継者を用意するための方便なんだから。そうだ、金髪碧眼は私にとって鬼門なんだから。
レイの髪を弄びながらそんな風に考えていると、扉を叩く音が聞こえた。
「セシル様っ! ただ今よろしいでしょうか!?」
「ええ、いいわよ。今日の解呪は終わったし……」
「失礼します!」
私が言い終わる前に珍しく焦った様子のイリアスが部屋へツカツカと入ってきた。