婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
定番になった膝枕スタイルには目もくれず、ソファーの横に跪き頭を垂れる。いつもとまったく違う行動に少しだけ面食らった。
「陛下にご報告があります。現在、皇城勤務者の間で呪われた者たちが大勢発生しており、緊急を要する事態でございます。そこで解呪の魔女様にお願い申し上げます。何卒お力をお貸しいただけないでしょうか?」
「そんなに呪いが……わかったわ。すぐに行く」
「イリアス、現場に案内しろ」
いつの間にか起きていたレイが、すこぶる調子良さそうに立ち上がった。
……この感じだと、イリアスの話はすべて理解しているようだ。
いつから起きていた? ねえ、いつから起きていたのよ——っ!!
「セシル、どうした? 俺に触れただけで力が抜けて立てないのか? 歩けないなら俺が抱きかかえてやるぞ?」
「自分で歩けるから結構ですっ!!」
固まっていた私をからかって、ニヤリと笑うレイを見て確信した。
コイツ、狸寝入りだったんだ! ずっと寝たふりして、私がおかしなことをしないか、様子を伺ってたんだわっ!!
うわあああああっ! すっっっっっっごい恥ずかしいし、めちゃくちゃムカつく——!!
ともかく、苦しんでる皇城の人のために怒りを呑み込んで、イリアスの後についていった。