婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
「シャロン、君の心根はなんて美しいんだ。あんな心の醜い姉にすら感謝するなんて……」
「わたくし、最後にお義姉様とお別れをしたいわ。よろしいかしら?」
「ああ、だが少しだけだ。なにをされるかわからんからな」
「ふふ、エル様は心配性ね」
シャロンが聖女の微笑みを浮かべて、別れを惜しむかのように私に抱きついてくる。そして周りに聞こえないくらいの小さな声でこう言ったのだ。
「愚かで馬鹿なお義姉様。きっかけはわたくしが用意した媚薬だったけれど、その後も会う度に求められてたっぷりと愛を注いでもらったの。だからかわいい赤ちゃんのためにも大人しく消えてちょうだいね?」
シャロンの策略によってエルベルト様を奪われたのだ。それからずっとふたりに裏切られていた……そんなこと全然気がつかなかった。しかもお腹にはエルベルト様の子供がいるという。
それなら私が騒ぎ立てたところで今更どうにもならないだろうし、お腹の子に罪はない。
「ああ、それと。エル様は魔封じの腕輪も用意していたけど、お義姉様がかわいそうと言ってとめたの。感謝しなさいよ」
そうか、偽魔女だと私を呼んでも魔封じの腕輪もつけないのは、ただただ追い出したいだけなのだ。私が魔女でないと知っているシャロンは、それすらも自分をよく見せるために利用したということだ。