極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
 翔が息を呑むのが伝わってきた。

 でもすぐに言葉にしてくれる。

「ありがとう」

 そのあと、不意に席を立った。

 わかっていた果歩は自分も立ち上がる。

 すぐにテーブルを回り込んで、こちらへやってきた翔が果歩を腕に抱き込んだ。

 二年半ぶりだった。

 しっかりした、あたたかな体。

 抱きしめられて、果歩は胸の騒ぎと安心を同時に覚える。

 本当に、ここまで来られて良かった。

 触れ合った体と、しっかり包んでくれる優しい腕は、果歩にそう思わせてくれる。

「果歩……、ありがとう。本当に」

 ぎゅっと果歩を抱きしめて、翔は震えそうな声で名前を呼んできた。

 果歩は穏やかな気持ちで返す。

「私こそ……」

 腕を持ち上げ、そっと翔の背中に回した。

 こんなに幸せな気持ちになれるなんて、と感じ入ってしまう。

「果歩、少しいいかな」

 しばらく抱き合っていたけれど、不意に翔が少し力を緩めて、果歩の顔を見てきた。

「うん?」

 果歩は不意に違う話題になりそうなことを感じて、首をかしげる。

 その果歩に笑いかけて、翔は果歩を、すっと離した。

「車に残してきたものがあるんだけど、取ってきていいか?」

 不思議なことを言ってくる翔。

 果歩はますますわからなくなった。

「え? あ……うん。どうぞ?」

 それでも頷いた。

 翔はそれで、「少し待っていてくれ」と言って出ていった。

 果歩は不思議に思いながらも、玄関で立って待つ。
< 119 / 151 >

この作品をシェア

pagetop