極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
「コーヒーで良かったかな?」

 翔がトレイに乗せて持ってきてくれたのは、カップに入った二杯のコーヒーだった。

 芳しい香りと、ほかほか湯気を立てるそれが果歩の前に、ことりと置かれた。

「うん。ありがとう」

 果歩は笑みを浮かべてお礼を言う。

 次に翔がトレイから取り上げたのは、プラスチックのカップ。

 飛行機の絵がついたそれの中には、薄茶の飲み物が入っている。

「さ、航はお茶だぞ。はしゃいで喉が渇いただろ?」

 航の飲み物は麦茶だった。

 実家にいた頃からよく飲んでいた、希釈タイプですぐに作れるお茶である。

 今はホットで作ったものを、冷まして持ってきてくれたようだ。

「うーん! おちゃーちゃ!」

 翔が言ったことに、航はすぐ手を伸ばした。

 果歩はその航を抱き上げ、ローテーブルの前に下ろし、座らせた。

「気を付けてね」と果歩が取り上げ、持たせたカップから、こくこくと飲んでいく。

 翔のほうは、スムーズに飲んでくれたことに、ほっとしたようだった。

「ありがとう。わざわざごめんね」

 航を見守りながら、果歩も自分のコーヒーカップを持ち上げた。

 火傷をしないように、そっと飲む。

 香りの通り、濃いのにすっきりとした苦味で、とても美味しかった。

「いいや、むしろ幸せだよ。こうして三人でお茶を飲めるなんて」

 航を挟んだ逆隣に座った翔は、愛おしそうな眼差しでお茶を飲む航を見つめていた。
< 125 / 151 >

この作品をシェア

pagetop