極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
 果歩の胸が、サッと冷たくなる。

 自分が不用意に動いたせいで、ぶつかってしまった。

 テーブルの上はびしょびしょになっている。

 まさかこんな失態をしてしまうなんて。

 青ざめそうにもなった。

「だ、大丈夫? 果歩さん、かからなかった?」

 向かいの席で、同じように目を丸くして驚いていた翔が、ハッとした様子で果歩に聞いてきた。

 でもそんなことは関係ない。

 だって、ジュースを零すような動きをしてしまったのは自分だ。

「はい……。す、すみません! 私が余計なことを……」

 おろおろして、果歩はサムに向かって謝った。

 でもサムは、すぐに明るい笑顔に戻って、グラスをトレイに戻しながらフォローするように言ってくれる。

「アー、ダイジョーブ、ダイジョーブヨ」

 果歩は急いでバッグからハンカチとティッシュを取り出した。

 木のテーブルなら、ちゃんと拭けば大丈夫のはず。

 それなら少しでも早く拭ったほうが……。

 ハンカチを広げて、特に多く零れているところへ、ぱさっとかける。そっと水分を吸わせるようにした。

 驚いたのは、サムだけではなく、向かいに座っていた翔もだったらしい。

「ちょ、果歩さん、いいんだよ。せっかくのかわいいハンカチ……」

 慌てて止めようとされたけれど、果歩は拭く手を止めなかった。

「いえ! 私のせいだから……」

「……果歩さん」

 果歩がきっぱり言ったことに、翔は伸ばしかけていた手を止めた。

 驚いたように、名前を呟く。
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