極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
 果歩のその動きを制したのは、サムであった。

「ゴメンネ、ボクノセイヨ。スグ、フクヨ」

 そう言って、腰につけていたふきんを取り出す。

 ふきんは濡れていたようで、果歩がハンカチを退かすとすぐに、ササッとジュースはすべて拭われた。

「ハンカチ、ゴメンネ」

 料理を一部退かして、その下も拭いて、テーブルはすっかり元通りになった。

 綺麗にしてから、サムは申し訳なさそうに言ってくる。

「いいえ。私こそごめんなさい」

 簡単な日本語のほうが良いかと思ったので、果歩はそう謝った。

「スグ、カワリ、オモチシマス」

 サムはそう言って、急いだ様子で厨房へ戻っていった。

 パイナップルジュース以外は目立った被害がなかったことに、ほっとしたが、完全に安堵はできなかった。

 招待していただいた、特別なお店でこんな失敗してしまって。

 本当に申し訳ない……。

 そんなふうに自分を責めて、うつむいた果歩。

 翔が向かいから声をかけてきた。

「そんな顔、しないでくれ。たまにはあることだよ」
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