極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
 そう思うことにして、果歩は着ていた緑色のワンピース……日本の量販店で買った、ごく普通のもの……に手をかけた。

 ファスナーを下ろして、脱いでいく。

 代わりにパープルのワンピースを着はじめたけれど、着終えないうちから感嘆してしまった。

 肌触りの良さが明らかに違う。

 肌に馴染んで、吸いつくようだ。

 それでいてまとわりつくのとは違う。

 とても着心地がいい、とシンプルに思った。

 でも胸元はだいぶ空いている。

 下着がギリギリ見えないくらいだ。

 このようなデザインを着たことがない果歩は、ちょっと恥ずかしくなってしまった。

 ホルターネックは首の後ろでリボンを結ぶデザインだった。

 でもあまり上手く結べそうにない。

 おろしていた長い髪も邪魔になってしまいそうだ。

 服自体は着られたものの、結ぶのに手間取っていると、外から声をかけられた。

「いかがでしょうか?」

 店員の彼女だ。

 果歩はどきっとしたけれど、正直に言うことにする。

「あ、あの、リボンがちょっと難しくて……」

 すぐ了解されたようで、外から優しい声が返ってきた。

「かしこまりました。お手伝いいたしましょう」

 カーテンの隙間から入ってきた彼女によって、リボンを結んでもらう。

 果歩が長い髪を掻き上げているうちに、彼女が首の後ろで、きゅっと適度な硬さで結んでくれた。多少のことではほどけなさそうである。
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