極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
 これでいいかと聞かれたが、嫌なはずがない。

 ただ、自分にはもったいないと思うだけだ。

 結局ワンピースはこれで決定になり、そのあと店員の彼女が白いレース素材のボレロを見せてきて、それは紙袋に入れてくれた。

 今、着ないのかと不思議に思った果歩だったが、別に寒くなどない。

 翔は悪戯っぽく「あとで使うから」とだけ言って、次には店員の彼女が奥を示した。

「では、お嬢様。あちらでお(ぐし)のセットをさせていただきます」

 そこにはカーテンで仕切られた場所がある。

 きっと髪をアレンジしてくれるのだろう。

「え!?」

 そんなことはまったく考えていなかったので、目を丸くした果歩だったが、にこっと笑った翔が説明した。

「せっかく首の後ろのリボンがかわいらしいから、アップスタイルが良いと思ったんだよ。すぐに終わるから」

 それで果歩はメイクルームへ連れて行かれて、数分で髪をアップにされてしまった。

 店員の彼女はゆったり笑みながら、「よくあることですのよ」とそれだけ言って、でも果歩はなんとなく察した。

 こういう『女性に服を贈る』という行為。

 このような高級店なら『よくあること』なのだろう。

 自分には縁がないと思っていたような世界なのに……。

 果歩が納得やら、納得したがゆえの混乱を覚えているうちに、髪は綺麗にまとめられていた。

 きっちりまとめられているのではなく、遊びが入ったというか、ふわっとしたアップスタイルである。

 これなら首の後ろのリボンもよく見えるだろうし、つけられた花の髪飾りも、この華やかでかわいらしいヘアスタイルにぴったりだった。

 これで本当に、すべて完成。
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