極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
 果歩はおずおずとメイクルームを出た。

「ああ、やはり的確だった。果歩さんによく似合う」

 翔はワンピースのときと同様に、明るい笑顔になり、手放しで褒めてくれる。

 果歩のお礼も同じように、おずおずしてしまったのだった。

「そうそう、さっきハンカチを濡らしてしまったから……、良ければ今日これから、使って」

 思い出したという顔の翔に差し出されたのは、ハンカチだった。

 淡いピンク色で、端にレースがついているフェミニンな印象のもの。

「あっ……、そうだった……、いいの?」

 そこでやっと果歩は思い出した。

 今となってはもう、あのレストランでのハプニングや、食事をしたことが遠い昔のことのようにすら感じる。

 あのとき、ハンカチはぐしょ濡れになってしまったから、処分してもらったのだった。

 洗えば良かっただろうが、旅行先では洗う場所も時間もない。

 仕方なかったのは確かだが、確かにハンカチはないと困るものだ。

 甘える形にはなるが、果歩は有難く受け取ることにした。

 そして追加とばかりに、店員の彼女が持ってきて、差し出してきたのは箱だった。

「お嬢様、こちらを」

 真四角の白い箱にはシフォンのような布が敷かれて、中にころんとした形の白いバッグが入っている。

 かわいらしい印象だ。

 ただ、だいぶ小さかった。

「え、……こ、これも!?」

 どう見てもそうであったが、無邪気に取り上げることなどできない。

 果歩はおろおろと翔を見上げた。
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