極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
 最後に店員の彼女が持ってきたのは、細くて高いヒールのパンプスだった。

 こちらは白のエナメルで、明るいハワイによく似合うと思ってしまう。

「さぁ、靴はこれだ。そこへ座って」

 翔がパンプスを取り上げて、果歩に近くの椅子に座るよう促す。

 おずおずと腰を下ろした果歩。

 布張りの椅子はやわらかで、ふかっと適度に沈んだ。

 しかし翔は意外な行動に出た。

 すっとしゃがみこんで、試着用のミュールを脱いだ果歩の素足を手に取り、持ち上げたのだ。

 果歩は仰天し、同時に顔がかぁっと熱くなった。

 こんな、映画で見るような、男性が女性に靴を履かせる行為なんて、もちろん受けたことがあるわけはない。

「なっ、しょ、翔さん!? ま、待って、ください!?」

 慌てて言ったのに、動けば邪魔になる、と思って暴れることはできなかった。

 その間に翔は持ち上げた果歩の小さい足に、パンプスをゆっくり履かせていく。

「このペディキュア、かわいらしいね」

 リゾートなのだからと塗ってきたペディキュアを褒められたけれど、間近で見られてしまったことのほうに、果歩の顔はますます熱くなるばかり。

「あ、あ、……りがとう……」

 返事はもう、しどろもどろだ。
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