極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
 翔のくちびるが動いて、そのくちびるから出てくる言葉を、果歩は期待していたのだけど……。

「……果歩の部屋は、海が見えるほうにしよう」

 出てきたのは、まったく違うことだった。

 果歩は一瞬、なんのことだかわからなくなってしまった。

 私の部屋?

 海が見えるほう?

 頭の中が混乱する。

 その間に翔は体を引いて、あるほうを指差した。

 果歩もぼんやりするような思いで、そちらを見た。

 そこはひとつのドアだった。確かに海側にある。

「あっちがオーシャンビューだから。朝から海が見えるよ」

 そう説明されてもさっぱりわからない。

 果歩は混乱した。

 その間に翔は、もうひとつの、隣にあるドアを示している。

「俺はあっちの部屋で寝るから」

 あっちの部屋……寝る……。

 頭の中で反すうして、果歩は閃くように理解した。

 つまり同じ部屋で寝ないということだ。

 ふたつベッドルームがあるらしくて、それぞれ別の部屋で寝ようということだ。

 それすなわち。

「え、……あの、別々、に?」
< 62 / 151 >

この作品をシェア

pagetop