極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
 信じたくない。

 ここまできて、そんなことがありえるだろうか。

 そうではありませんように、と願いつつ、果歩は確認するように口に出した。

 果歩のそれに、翔は困ったように微笑む。

「ああ。だって、今はまだ……」

 端的で、しかも濁ったような声だったけれど、果歩にとってはじゅうぶんだった。

 はっきり理解してしまう。

 翔が「今はまだ……」と続けた先を聞きたくなくて、それを遮っていた。

「そんなの……いや……!」

 口をついていた。

 そのまま翔の胸に、再びくっつく。

 縋るようにもなった。

 ぎゅっとしがみつく。

「か、果歩」

 翔のおろおろした声が降ってきた。

 でも果歩はもう聞きたくなかった。

 ここまで来て、結ばれない言葉なんて、聞きたくない。

「翔さんは……、翔さんは、私に……魅力とか、感じない……?」

 震える声で言っていた。

 大胆過ぎることだったが、二杯も飲んだお酒の酔いが口に出させた。
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