極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
兆候
「早瀬さん、ちょっと顔色が悪くない?」

 仕事中、上司に書類を届けに行った果歩は、心配そうに聞かれてしまった。

 三十代半ばの女性上司・三枝(さえぐさ)は、普段から果歩たち若い女子社員を気づかってくれる。

 気付かれてしまい、果歩は申し訳なくなった。

「ええ……、なんだか最近、あまり体調が良くなくて……」

 でも指摘されているのだから正直に答えた。

 三枝は眉根を寄せる。

「そう。風邪気味とか?」

 聞かれたけれど、果歩は曖昧な顔をするしかなかった。

 風邪とは少し違うような気がする。

 熱もないし、お腹を壊しているわけでもない。

 ただ、たまに吐き気はする。

 気持ちが落ち着かないと感じることもある。

 生理前の調子に似ているけれど、果歩は元々あまり生理が安定しているほうではない。

 あとから「ああ、来る前だったからかな」と知るくらいで、だから今回もそれかもしれない、と思った。

 そもそも今月もだいぶ遅れているな、とそこでやっと思ったくらいだ。
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