極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
「ううん……、なにか事情とか、あったんだよね?」

 だから穏やかに言った。

 果歩の言葉に、翔は頭を上げた。

 正面から果歩を見てくる。

 意外だ、とその目が言っていた。

「それはそうだが……、怒らないのか?」

 そんな目で言われたら、果歩こそ意外に思ってしまう。

 あのときは確かに驚いたし、傷ついたし、泣いてしまったけれど、今、そんな気持ちはもうまったくない。

 それどころか、良い想い出をもらえてよかった、と思っているのに。

「どうして? 翔さんには素敵な想い出をたくさんもらったし……、私はなにも怒ったり後悔したりなんてしてないよ」

 その心のままに、口に出した。

 果歩の言葉を聞いて、翔は黙る。

 目が丸くなっていて、その表情が、果歩の返事は彼にとって想定外のものだったのだということを示していた。

 しばらく沈黙が落ちた。

 果歩は困ってしまう。

 この様子では翔は、自分に責められるだろうと思っていたようなのだ。

 でもそんなつもりはない。

 そして、それは説明した。

 ならば、どう続けたらいいんだろう。
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