極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
 果歩がそう言ったのが最後だった。

 翔は止まった表情を歪める。

 痛みを堪えるような、切なげな表情になる。

「……果歩は……優しすぎるだろう」

 絞り出すように言われたけれど、果歩は今度、軽く首をかしげた。

「そんなことないよ。私は本当にそう思ってるから、こうしているに過ぎないもの」

 本当にその通りだ。

 自分がそう思って、そうしたいと思って、しているに過ぎないのだから。

 確かに一般的には『妊娠させた』と怒ったり、責任を求めたりしても良いところなのだとはわかる。

 その感情や感覚もわかる。

 ただ、自分はそう思わない。

 それだけだ。

 無理もなにもしていない。

 本当に、心から、航を授かったことに感謝しかないから、こうあるだけだ。

「それが優しいんだよ……。……ああ」

 翔はやはり絞り出すように言い、最後に独り言のように呟いた。

 うめくのにも近い声だったので、果歩はよくわからなかったし、どう答えていいのかもわからなかった。
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