拾った男,まさかの一生もん
「おい…!!!!」



風呂場からでかい音がする。

俺は出来上がったチャーハンの火を止めて,その元凶の元へ向かった。



「俺はおいじゃねぇ」



壁に背をつけて,右手で扉をノックする。

すると反応はすぐに返ってきた。



「~っふざけんな! 分かってんだろ…~っゆう!」

「なんだ,覚えてたのか」

「るっさいな,返せよ俺の服!」



ギャーギャーうるさい。

俺は俺で,こんなやつ拾ってどうしようと思ったんだか。 



「あんなもん着てたらシャワー浴びた意味ねぇだろ。今乾かしてるよ」

「は? じゃあどうしろって…」

「代わりにこれ着とけ。やるよ」



俺は持ってきた自分の服を,扉の向こうに投げ入れる。

あずさはあずさで,なんとかキャッチしたようだ。



「飯出来たからそれ着て食ったら帰れ。人に貰っといて雨で使いもんにならなくなんてしたら殺すからな」

「だからいらな」

「服は今度取りに来い」



あずさを拾った場所から,ここはそんなに遠くない。

どのみち高2にもなれば余裕なはずだ。

俺はあずさを置いて,キッチンへとまた歩き出した。
< 3 / 10 >

この作品をシェア

pagetop