太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
翌日のご葬儀は更に大勢の参列者がいらっしゃって、ひよりんとお昼ごはん抜きで2人で慌ただしく働いた。


お斎も無事に終わり、諒がご喪家様にご挨拶をするとフロントの私達も一緒にお見送りをし、漸くホールでの一連のお仕事が終わった。


「フロントもお疲れ様、なかなか大変だったでしょ」

「ふぅ…そうだね、ちょっと忙しかったね」
「でも麻依先輩のおかげで今日もバッチリですぅ」
「違うよ、ひよりんの頑張りのおかげだよ」

「ふ、まぁみんな頑張ったってことで」

「じゃあ、これから軽くお昼ごはん食べよっか。ね、ひよりん」
「そうですね、お片付けの前に食べとかないと倒れそうですもんね」

「それは翔琉が心配するからちゃんと食べといてね。あ、麻依もだよ?俺も心配だから」

「うふふ、ハイッ了解ですッ」
「うん、ありがと」



フロントの事務所の奥でお昼を食べていると翔琉くんがやってきた。

コンコン
「すんませーん…あ、昼メシだったんスね、んじゃ後で…」

「いいよ、もう終わるからどうぞー。2時半だし、おやつに寄ってって?」

「え、いいんスか?」

「うん、多い方が楽しいじゃない、ね、ひよりん」

「ハイッ、翔琉さんもどうぞ。今コーヒー入れますね」

「ん、そんじゃ遠慮なく」


そこへ諒くんもやって来た。

コンコン
「食事中にごめん、あ、後がいいかな?」

「いいよ、お昼食べ終わったから。諒もお茶してく?」

「いいならお邪魔するね」

「諒さんもどうぞどうぞ。コーヒー入れますから」

「悪いね、ありがとう」


みんなでコーヒーを飲みながら今日の仕事の話をしていたら、ロビーの電気を落とすのを忘れてた事を思い出した。

「ごめん、ロビーの照明、少し落としてくるね」

「あっそうでした!麻依先輩すみません、私が忘れてました」

「ううん、私もすっかり忘れてたからさ」

とロビーに向かっていたら、一人の黒い衣装の女性がホールに入ってきた。

…今日の会葬者でお忘れ物?
それとも関係者の方?


幾つかの可能性を考えながらその女性の元へ向かい、手前で一礼して声をかけた。

「失礼いたします。今日のご葬儀は終わりまして、ご喪家様もお帰りになられましたが、何かお忘れものでもございましたでしょうか」


するとその女性は少し躊躇しながら言った。

「あの…佐伯…諒…さんはおられますか?」

え、諒のお客様?


「…佐伯ですか、はい、おりますが…失礼ですがお名前を伺ってもよろしいですか?」


「……私は日野といいまして…佐伯 諒の…母です」

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