太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
…え?

えぇ!?

…っと、私がここでパニクってはいけない。

「お母さま…でいらっしゃいますか…失礼いたしました。こちらへお掛けになって…少しお待ち下さい」

一礼してさりげなくその女性を見た。


…あ!この人、昨日の例の女性だ!


でも…お母さまって…?

え? え?



フロントに戻り、諒を呼び出すと、2人でロビーから見えない部屋に入った。


「どうした?」

「諒、あのね、今…諒の母親だっていう女性がロビーに来てて…」


「…は?俺の母親?…どういうこと?」

「わからない、そう言ってたの。それに、昨日のお通夜の後、ロビーで諒のこと見てたの、その人」

「何それ…」


「どうする?やめとく?会わないなら私が言ってくるから」

「…いや、とりあえず会うよ。嘘かもしれないし。でも、もしかしたら……本当かもしれないから……麻依にも一緒にいてほしい…」

「え…いいの?もし本当なら大事なことじゃない」

「大事なことだから…麻依にいてほしいんだ」

諒の目が弱々しく私に訴えかける。



もし本当だったら…


本当の事を知るのが怖いのかもしれない…

いや、きっと怖いはずだ。
長い年月、これに囚われてきたんだもの。

〝捨てられた過去〞に…



ん!
覚悟を決めて気合いを入れると、私は諒を強く抱きしめた。

「大丈夫。何があっても私がついてるよ」

顔を上げて諒を見ると、その目は少しずつだけど強さを取り戻している様に見えた。

「麻依…ありがとう…すげぇ心強い」

ぎゅう…と抱きしめ返される。


「よし、心のチャージできた。じゃあ…行こうか」



そして、フロント内にいるひよりんと翔琉くんに〝2人で席を外す〞と伝え、ふぅ…と息を吐いた諒と共に、ロビーで待つその女性の元へ向かった。
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