太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
「…麻依さんは、諒…さんと長いお付き合いのようですね…」
「…えっ」
いきなり話しかけられてちょっと驚いた。
友美さんを見ると、目は涙を纏っているが優しい顔をしている。
…あぁ、似てる。諒の目に似てる…
って、浸ってる場合でなくて質問に答えなきゃ。
えっと、長い付き合いか、は…
「いえ、そうでもないんです」
本当は私が口出しすることは良くないのだろうけど…
ここにいる立場の意味を考えたら、言うべきだと思った。
「諒は今年の3月にこのホールに配属されて来ました。そこで私達は初めて出会いました。諒はそれまで、この会社の他の支社で働いていましたが、お互いに知りませんでした。お付き合いを始めたのは7月の終わり頃からです。…なので、実はまだそんなに長くはありません」
少し苦笑して答える。
「そう…でもとても長いお付き合いをされているよう……麻依さんを信頼されているのね」
「そうだと嬉しいです。…あ!お茶も出さずにすみません、少々お待ちください」
席を立った際にロビーの奥を振り返るが、まだ諒が来る気配はない。
心配だけど…一人にさせておこう。
お茶を用意し、友美さんの前に「よろしかったらどうぞ」と置いた。
「こちらこそ急に押しかけてきたのに…ごめんなさい…」
トレーをソファの脇に立て掛けると、また元の位置に座った。
けど、またしばしの沈黙…
私にできること…言えること…って何だろう…
少し考えて、私はやや俯いて話し出した。
まだ友美さんの顔を見て話せるほどの自信はない。
ただ、自分の気持ちを吐露したかった。
「…すみません…これは私が勝手に思っていることですが…」
「えぇ…」
「きっと諒は今とても混乱していると思います。心の整理がつくまで…もう少し時間がかかると思います」
ん。
少し気合いを入れる。
「私も全てを理解しているわけではないですが…諒は、あなたに置いていかれたことが大きな心の傷になっています。佐伯のご両親には愛されて育ったと私も思います。…でも、信頼している人に裏切られる事をおそれて、人と深く関わることができずにいました…ずっと。…でも心の底ではずっと誰かに甘えたかったと…。でもそれができずに独り苦しんできた…」
ふ…ぅ。
軽く息を吐いた。
「ですが諒はここ、ソレイユに来てから変わりました。もちろん最初は諒も心を閉ざしていたと思います。…でもここの仲間、みんなが諒を受け入れて、それに諒も少しずつ心を開いてくれました」
うん…そうだったよね。
自分の言葉に頷く。
「きっと諒は前向きに考えられる様になってきています。諒は真面目でしっかりしていて、ソレイユの支配人としてホールをまとめていて、皆から信頼されている、とても優しくて強い男性です」
そう。
諒は強い人。
「でも繊細で脆いところもあって…私はそんな諒を愛していますし、諒が私を必要としてくれている限りずっと支えていきたいと思っています」
あ、実母の方にこんなことまでさらけ出しちゃったけど…いいよね。
「諒があなたを許すかどうかは私にもわかりません。でも…いつかきっと…あなたのその、諒を預けなければならなかった気持ちは…わかってくれる日が来ると、私は信じています」