太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
「あのぅ…すみません」

麻依が日野さんに話しかけた。


「えっと、諒はお父さまに似てるんですよね?」

俺の父親のこと?

「えぇ、とても似ていると思います」

「あのぅ…もしよろしければ…今度お写真とか見せてもらえないですか…?」

「あっ、えぇ、もちろんいいですよ」

少し驚きながら、日野さんが麻依に微笑んだ。


「ずっと持ち歩いている写真なら今ありますが…」

「えっ、見てもいいですか!?」

「えぇ、ぜひ」

その麻依の勢いに、つい顔がほころんだ。


「ん?…何?」

クッ
「いや、すごい食いつきようだから」

「だって諒のお父さまだよ?お母さまもお綺麗な方だし、諒に似てるならきっと素敵な方だと思って」

ん?

…なんかちょっと…ムッ…


「ちょ、お父さんだよ?何で妬くの」

あっバレてる…
それ言われたら恥ずかしいじゃん…
と、片手で顔を隠した。


そんな俺達を見て、日野さんがフフフと笑いながら1枚の写真を出した。

「わ!似てるっていうかそっくり過ぎ!諒より少しキリッとしてるかな…でも遠目なら諒って言ってもわからないかも!…あれ?もしかして抱っこされてる子って…諒ですか!?」

「えぇ、まだ1歳くらいの頃かしら」

「えぇ~!天使!ほっぺふっくらですっごいかわいい!諒、こんなにかわいかったんだね!」

「…今がかわいくないみたいな言い方…」

「違うってば、今もかわいい時はあるけど〝かわいい〞の意味合いが違うでしょ?それにお父さん、やっぱり素敵だね!…ってだから何でお父さんに妬くのー」

ムゥの口に人差し指でツンツン…いや、ペシペシとやさしく叩かれた。


…でも確かに似てるな…
歳も今の俺と近いってのもあるだろうけど…


これが俺の本当の父親で…
…友美さんが俺を産んだ母親…


そして、俺を育ててくれた佐伯の両親、か…


少しずつ、心の整理ができてきてるのかな…
今は落ち着いて考えられる。


これも写真を見たいと言い出した麻依のお陰だな。
ほんと、すごい人だよね、麻依って。

フッと笑って麻依を見ると、その写真をスマホで撮影してる…

「何してんの?」
「写真の写真撮ってるの」
「何で?」
「だってすぐ見れるようにしたいじゃない?」

…俺の父親にそんなに興味あんの?
またムゥの口になるじゃんか…

うん、今日はウチに泊まってもらうからね、麻依。



その後、俺の名刺に私用の携帯電話の番号を書いて日野さんに渡すと、日野さんも俺に名刺をくれた。


「不躾な質問ですみません。〝日野〞さん、てことは再婚はされていないんですか?」

麻依が尋ねた。
そっか、確かにそうだな。

「えぇ、してません。私には稔さんだけですから…」

そう言うと、日野さんはフフフと柔らかく笑った。


この日は穏やかに終わり、日野さんは「今日は突然の訪問にも関わらず本当にありがとうございました。…では、ご連絡をお待ちしております」とソレイユを後にした。




ふぅ…
何だかまだ信じられないけど…
事実なんだよな…


あ、そうだ。忘れない内に言っとこ。

「麻依、明日は休みだったよね。今日は俺のところに泊まってもらうからね。…フ、覚悟してよ?」

「…何で覚悟…?」

「さぁ?何でだろうね?わからない?」

「えっと…まさか、ヤキモチやかせたから、とか!?」

「わかってんじゃん」

「えぇーお父さんなのに…ちょっと諒、こわいってば…ムゥ」

「あ、麻依がムゥの口になった。ん、可愛い、キスしたくなるね、コレ」
って言いながら顔を近づける。

「だっダメだからね!職場だからね、ここ」

「じゃあ夜にね」

「ううぅ…諒がイジワルだ」

「あー夜が楽しみだな。…俺、寝かせるつもりないからね?」

チラリと麻依を見る。
ふ、赤い顔して…可愛いんだから。


あー、早く仕事終わんねぇかなー、なんて、今日は不真面目な俺。

< 114 / 268 >

この作品をシェア

pagetop