太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
自販機でお茶、ジュース、コーヒーなど少し多めに買って病室へ戻ると、まだ写真を見ながらの会話が盛り上がっていた。
「飲み物買ってきたよ、好みのがあるかわからないけど、よかったらどうぞ」
エコバッグから飲み物を取り出し、アルバムの邪魔にならない様にテーブルに並べた。
それぞれ好きなものを取ってもらうと、お母さん達はそれを飲みながらまた話に花を咲かせている。
私はまだ見ていない写真の続きを諒と一緒に見ることにした。
「基本的にお父さん似だけど、諒の方が優しい感じがするね。うん、目元がお母さんなんだねー」
「自分だとよくわかんないけどね」
なんて照れ笑いがかわいい。ふふっ。
「あっそうだ!今度、佐伯のお父さんの写真も見てみたいな」
「うん、こっちの父さんもいい男だと思うよ。あっ、そこに興味を持たないでよ?」
「何言ってるの、そういうのじゃないから、あはは」
「…それ、私も見せてもらってもいいかしら」
「ええ、ぜひ!友美さんも一緒に佐伯家の家族写真見ましょ!あー諒の学生時代とか興味あるなぁ…超絶モテてたよね?」
「…妬いてくれるの?」
「いや、そこには妬かないかな。ただ、すごかったんだろうなーって」
「あ、そう…」
「え?諒は、もし私が学生時代にモテてたら妬くの?」
「うん」
「…そうなんだ。まぁ安心していいよ、モテてないし」
「嘘だね」
何で断言…
「いや、ほんとに全然だから」
「何言ってんだ、麻依。そんなことないだろう?中学生の時は拓也くん達が言い寄ってくる他の中学の男の子達まで蹴散らしてくれてたし、高校生の時はユキナリくんだったかな、その彼がその役目をしてくれてたし、いやぁ、これでなかなか人気があったんだよ?ハハハハハ」
ああぁ…お父さん、何いらないこと喋っちゃってるのよ…
「へぇ…やっぱ麻依、モテてたんじゃない。専属のボディーガードまでいてさ。俺、妬いちゃうなー」
テーブルに頬杖ついて少し私を見上げる。
ほら…ほらね…このやけに落ち着き払った声。
軽ーく嫉妬してる風に言ってるようで、その実すこぶる機嫌が悪い時の、声。
そして、この目。
ムゥじゃなくて、その上を行っちゃった時の『夜、覚悟してね』の目…
はぁ…別にやましいことは何もないけど、言わなくてもいいことだから黙ってたのに…
とりあえず「そんな妬くことじゃないよー、あはは」なんて焼け石に水な言葉をかけておく。
「ほんとに諒は麻依ちゃんが大好きなのねぇ。お嫁さんに来たら家から出さないんじゃないかしら…それは困るわよねぇ?」
と秋絵さんは本気とも冗談とも取れる声色で私に言う。
はははは…と乾いた笑いしか出てこない。
「そうできたらいいんだけどね」
ハイ!?
「そんなこと言ってると麻依ちゃんに逃げられるわよ?」
「え……逃げんの?」
「いやぁそんなワケ…あははは…」
「逃げるなら尚更出せないじゃん」
「は……」
乾いた笑いすら止まったよ…
「ふっ、うふふふ…本当になんでこんなところが似るのかしらね、ふふふふ、本当にあの人みたいでおかしくって」
本当におかしそうに友美さんが笑う。
「…えっと、さっきよりひどいんですけど、お父さまもそうだったんですか…?」
「ひどいって何」という諒の言葉はスルー。
「ふふふふ、私も言われたんです、外に出したくないって。それで働かせてもらえなくて、ふふふ」
秋絵さん、お父さん、お母さん、私の4人は諒を見て、あぁ…という顔。
…血は争えないとはこういうことか…
「まぁでもいいじゃないか、それだけ大事にしてもらるってことだからな。そうだろ?諒くん」
「えぇ、もちろん大事にします」
親の前でもきっぱり言い切っちゃう諒が頼もしくて…愛しさが込み上げる。
「麻依だってそうだろう?」
へっ?
急にお父さんから振られて驚いた。
「麻依も諒くんのことを大事にするんだろ?」
「当たり前じゃない。諒が必要としてくれるなら私はずっと支えていくよ」
「それを聞いて安心したよ。諒くんばかりが麻依を大事にして、麻依が諒くんを蔑ろにしてたらどうしようかと思ったよ」
「俺は麻依に本当に何から何まで支えられてて、俺の人生にどうしても必要な人なんです。それに麻依も同じように俺を必要としてくれてるし、愛されて、大事にされてますから、義信さんもお母さんも、俺の母さん達も安心してください」
「ふふ、諒くん、結婚の挨拶みたいね」
「そうですね」
と言うと、諒がお父さん達に向き合った。
「義信さん、智世さん。麻依さんと結婚させてください」
え……えぇ!?
私…何も聞いてないよ!?
「まぁ!諒くんが私の息子になるのねぇ!」
「一度『お前に娘はやらん!』ってセリフを言ってみたかったんだけど、諒くんじゃあ言えないよなぁ、ハハハ」
「ではお許し頂けますか?」
「当たり前じゃないか、俺は前から息子同然に思ってたしな。何なら麻依に勧めようかと思っていたくらいだからな」
「…ありがとうございます!」
すると、今度は秋絵さんと友美さんに向き合って言う。
「麻依と俺の結婚、母さん達も許してくれる?」
「許すも何も…麻依ちゃんが諒のお嫁さんになってくれるなんて大歓迎よ!」
「私も…ホールでお二人を初めて見た時からお似合いだと思っていたわ」
「…ありがとう」
次の瞬間、諒が破顔して私を抱きしめた。
「よかったぁ…」
けどそれは力が抜けたように優しい抱きしめ方。
そっか、最初からそのつもりだったんだ…
諒も緊張してたんだね…
私もそっと背中に手を回す。
「諒…ありがとう」
「それにしても、諒はほんとに麻依ちゃんを他の人に取られたくないのね。うふふ」
秋絵さんが楽しそうに笑う。
「そりゃそうだよ、麻依はモテるんだから。大きな社葬があった時なんて、麻依と話したいからってフロントに数珠を買いにくる男がわんさかいたし、しかもそいつら後日ホールにも来たし、あとホールに来た住職からは『うちの息子の嫁に』とか言われるし、マジで狙う男が多いんだって」
いやいやいやいや、と私は手をヒラヒラさせるけど、諒の話は止まらない。
「麻依の同期の智さんもだし、智世さんの会社の戸田さんも麻依のこと狙ってるっぽいし、ほんとに油断ならないんだから」
「でっでも諒もすごいモテてるよね?」
よし、言い返したる!
「いや?全然」
あっ、簡単にハネられた!
「すごいモテてるの!お客様の親族でも会葬者でも、女性の諒を見る目がすごいんだから。それは私の比じゃないよ?」
ふんっ、もうごり押し!
「でもその場限りで見られるだけで声はかけられないし、俺のはモテてるとは言わないよ」
あうっ!ごり押しがハネられた!
「見た目だけじゃなくて、麻依の人間性に惹かれる男が多いから心配なんだよ」
そして私の頭をポンポンワシャワシャ。
「それはわかるわぁ」
秋絵さんがうんうんと頷く。
「そうね、女の私も惹かれるもの」
友美さんも頷く。
いやいやいやいや、と私は手のひらをブンブン振る。
「それは買い被りすぎですって…」
「だからさ、早く『麻依は俺の』って世に知らしめたいの」
「いや…世って…。そもそも私は言い寄られても他には行かないから」
「それに早く一緒に暮らしたいしさ。ね?」
「…ふ、そうだね」
もう…諒には敵わない。
「よし、まだまだ話し足りないだろうけど、そろそろお開きにするか。秋絵も久しぶりにこんなに話して、少し疲れただろ」
「あら、そういえばそうね、楽しすぎてすっかり体調のことなんて忘れてたわ、ふふふ」
「母さん、また近いうちに麻依と来るよ」
「はい、一緒に来ますね」
「私も義信さんに連絡取って、また来るわね」
「秋絵さん、今日は本当にありがとうございました。私もまたお会いしたいです。諒のお話、また聞かせてくださいね」
「ええ、ぜひ!みんな、ありがとう。本当に今日は嬉しかったわ!またお待ちしてるわね」
そう言って、秋絵さんは笑顔で私達を送り出してくれた。
「飲み物買ってきたよ、好みのがあるかわからないけど、よかったらどうぞ」
エコバッグから飲み物を取り出し、アルバムの邪魔にならない様にテーブルに並べた。
それぞれ好きなものを取ってもらうと、お母さん達はそれを飲みながらまた話に花を咲かせている。
私はまだ見ていない写真の続きを諒と一緒に見ることにした。
「基本的にお父さん似だけど、諒の方が優しい感じがするね。うん、目元がお母さんなんだねー」
「自分だとよくわかんないけどね」
なんて照れ笑いがかわいい。ふふっ。
「あっそうだ!今度、佐伯のお父さんの写真も見てみたいな」
「うん、こっちの父さんもいい男だと思うよ。あっ、そこに興味を持たないでよ?」
「何言ってるの、そういうのじゃないから、あはは」
「…それ、私も見せてもらってもいいかしら」
「ええ、ぜひ!友美さんも一緒に佐伯家の家族写真見ましょ!あー諒の学生時代とか興味あるなぁ…超絶モテてたよね?」
「…妬いてくれるの?」
「いや、そこには妬かないかな。ただ、すごかったんだろうなーって」
「あ、そう…」
「え?諒は、もし私が学生時代にモテてたら妬くの?」
「うん」
「…そうなんだ。まぁ安心していいよ、モテてないし」
「嘘だね」
何で断言…
「いや、ほんとに全然だから」
「何言ってんだ、麻依。そんなことないだろう?中学生の時は拓也くん達が言い寄ってくる他の中学の男の子達まで蹴散らしてくれてたし、高校生の時はユキナリくんだったかな、その彼がその役目をしてくれてたし、いやぁ、これでなかなか人気があったんだよ?ハハハハハ」
ああぁ…お父さん、何いらないこと喋っちゃってるのよ…
「へぇ…やっぱ麻依、モテてたんじゃない。専属のボディーガードまでいてさ。俺、妬いちゃうなー」
テーブルに頬杖ついて少し私を見上げる。
ほら…ほらね…このやけに落ち着き払った声。
軽ーく嫉妬してる風に言ってるようで、その実すこぶる機嫌が悪い時の、声。
そして、この目。
ムゥじゃなくて、その上を行っちゃった時の『夜、覚悟してね』の目…
はぁ…別にやましいことは何もないけど、言わなくてもいいことだから黙ってたのに…
とりあえず「そんな妬くことじゃないよー、あはは」なんて焼け石に水な言葉をかけておく。
「ほんとに諒は麻依ちゃんが大好きなのねぇ。お嫁さんに来たら家から出さないんじゃないかしら…それは困るわよねぇ?」
と秋絵さんは本気とも冗談とも取れる声色で私に言う。
はははは…と乾いた笑いしか出てこない。
「そうできたらいいんだけどね」
ハイ!?
「そんなこと言ってると麻依ちゃんに逃げられるわよ?」
「え……逃げんの?」
「いやぁそんなワケ…あははは…」
「逃げるなら尚更出せないじゃん」
「は……」
乾いた笑いすら止まったよ…
「ふっ、うふふふ…本当になんでこんなところが似るのかしらね、ふふふふ、本当にあの人みたいでおかしくって」
本当におかしそうに友美さんが笑う。
「…えっと、さっきよりひどいんですけど、お父さまもそうだったんですか…?」
「ひどいって何」という諒の言葉はスルー。
「ふふふふ、私も言われたんです、外に出したくないって。それで働かせてもらえなくて、ふふふ」
秋絵さん、お父さん、お母さん、私の4人は諒を見て、あぁ…という顔。
…血は争えないとはこういうことか…
「まぁでもいいじゃないか、それだけ大事にしてもらるってことだからな。そうだろ?諒くん」
「えぇ、もちろん大事にします」
親の前でもきっぱり言い切っちゃう諒が頼もしくて…愛しさが込み上げる。
「麻依だってそうだろう?」
へっ?
急にお父さんから振られて驚いた。
「麻依も諒くんのことを大事にするんだろ?」
「当たり前じゃない。諒が必要としてくれるなら私はずっと支えていくよ」
「それを聞いて安心したよ。諒くんばかりが麻依を大事にして、麻依が諒くんを蔑ろにしてたらどうしようかと思ったよ」
「俺は麻依に本当に何から何まで支えられてて、俺の人生にどうしても必要な人なんです。それに麻依も同じように俺を必要としてくれてるし、愛されて、大事にされてますから、義信さんもお母さんも、俺の母さん達も安心してください」
「ふふ、諒くん、結婚の挨拶みたいね」
「そうですね」
と言うと、諒がお父さん達に向き合った。
「義信さん、智世さん。麻依さんと結婚させてください」
え……えぇ!?
私…何も聞いてないよ!?
「まぁ!諒くんが私の息子になるのねぇ!」
「一度『お前に娘はやらん!』ってセリフを言ってみたかったんだけど、諒くんじゃあ言えないよなぁ、ハハハ」
「ではお許し頂けますか?」
「当たり前じゃないか、俺は前から息子同然に思ってたしな。何なら麻依に勧めようかと思っていたくらいだからな」
「…ありがとうございます!」
すると、今度は秋絵さんと友美さんに向き合って言う。
「麻依と俺の結婚、母さん達も許してくれる?」
「許すも何も…麻依ちゃんが諒のお嫁さんになってくれるなんて大歓迎よ!」
「私も…ホールでお二人を初めて見た時からお似合いだと思っていたわ」
「…ありがとう」
次の瞬間、諒が破顔して私を抱きしめた。
「よかったぁ…」
けどそれは力が抜けたように優しい抱きしめ方。
そっか、最初からそのつもりだったんだ…
諒も緊張してたんだね…
私もそっと背中に手を回す。
「諒…ありがとう」
「それにしても、諒はほんとに麻依ちゃんを他の人に取られたくないのね。うふふ」
秋絵さんが楽しそうに笑う。
「そりゃそうだよ、麻依はモテるんだから。大きな社葬があった時なんて、麻依と話したいからってフロントに数珠を買いにくる男がわんさかいたし、しかもそいつら後日ホールにも来たし、あとホールに来た住職からは『うちの息子の嫁に』とか言われるし、マジで狙う男が多いんだって」
いやいやいやいや、と私は手をヒラヒラさせるけど、諒の話は止まらない。
「麻依の同期の智さんもだし、智世さんの会社の戸田さんも麻依のこと狙ってるっぽいし、ほんとに油断ならないんだから」
「でっでも諒もすごいモテてるよね?」
よし、言い返したる!
「いや?全然」
あっ、簡単にハネられた!
「すごいモテてるの!お客様の親族でも会葬者でも、女性の諒を見る目がすごいんだから。それは私の比じゃないよ?」
ふんっ、もうごり押し!
「でもその場限りで見られるだけで声はかけられないし、俺のはモテてるとは言わないよ」
あうっ!ごり押しがハネられた!
「見た目だけじゃなくて、麻依の人間性に惹かれる男が多いから心配なんだよ」
そして私の頭をポンポンワシャワシャ。
「それはわかるわぁ」
秋絵さんがうんうんと頷く。
「そうね、女の私も惹かれるもの」
友美さんも頷く。
いやいやいやいや、と私は手のひらをブンブン振る。
「それは買い被りすぎですって…」
「だからさ、早く『麻依は俺の』って世に知らしめたいの」
「いや…世って…。そもそも私は言い寄られても他には行かないから」
「それに早く一緒に暮らしたいしさ。ね?」
「…ふ、そうだね」
もう…諒には敵わない。
「よし、まだまだ話し足りないだろうけど、そろそろお開きにするか。秋絵も久しぶりにこんなに話して、少し疲れただろ」
「あら、そういえばそうね、楽しすぎてすっかり体調のことなんて忘れてたわ、ふふふ」
「母さん、また近いうちに麻依と来るよ」
「はい、一緒に来ますね」
「私も義信さんに連絡取って、また来るわね」
「秋絵さん、今日は本当にありがとうございました。私もまたお会いしたいです。諒のお話、また聞かせてくださいね」
「ええ、ぜひ!みんな、ありがとう。本当に今日は嬉しかったわ!またお待ちしてるわね」
そう言って、秋絵さんは笑顔で私達を送り出してくれた。