太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
プロポーズ/side諒
「諒、ごちそうさまでした。ありがとう。とっても美味しい料理を諒といただけて、本当に幸せ」
「ん、俺も幸せ。麻依と一緒だと何倍も美味しくなるよな」
「ふふっ、うん、そうだね……あっ!夜景、すごいね!」
麻依が一面のガラス窓に近づいた。
「うわぁ…キレイ…光がいっぱい……ビルも高いのばっかりだし…東京ってすごいね……なんて田舎モノ丸出しだね、エヘヘ」
俺も麻依の後ろから覗き込む。
「ほんとだ…すげぇ…こんなの初めて見た」
「諒はこういうとこ…誰かと来たことないの…?」
「ないよ。麻依と来たのが初めてだもん。っあ…言っちゃった……高いとこに慣れてないのバレバレじゃん…はぁ…カッコ悪…」
「そんなことない!諒はカッコいいよ。今日もずっとスマートにエスコートしてくれてたもん。だから…すごくカッコよくて…素敵だなって…ドキドキしてた」
エヘヘって照れながら麻依が笑う。
「…ありがと」
カッコ悪いとこも受け入れてもらえるって、やっぱ嬉しい。
「そういえばさ…」
麻依がクルリと向きを変え、夜景を背にして呟いた。
「ん?」
「諒…前に〝俺は人に縁がない〞って言ってたよね?」
「あぁ…うん」
「諒は人の縁に恵まれてると思うよ」
「…恵まれてる?」
「うん。一番の縁は佐伯のご両親でしょ。それに森田社長と私のお父さんは血の繋がりはなくても諒のおじさんだし、蓑部さんは佐伯のお父さんを弟の様に慕ってらした方だし。…確かに2人のお父さんが亡くなっていることは残念で悲しいことだけど…でもいろんな人が諒を支えようと手を差し伸べてるんだもん」
「…俺を支える?」
「そう。みんな諒を愛してるから、支えたくて手を差し伸べてるの。親戚だからとか知り合いだから仕方なくなんじゃない。全部、諒のお父さんやお母さんが築いて、繋いでくれた縁なんだよ」
「……」
「世の中、親戚だからって誰でも支える訳じゃないよ?愛がなきゃ手を貸そうなんて思わないもん」
「……」
「きっと…今日、蓑部さんに会えて繋がりが持てたのは、今まで辛い時を過ごしてきた諒への、サンタさんからのプレゼントだねっ」
ふふっ、て笑う麻依が…神々しくて眩しい。
「でも…俺はそのありがたみ…いや、縁ていうそのもの自体に気がつかなかった。気付けなかった…だから一人で…孤独で…勝手に腐ってた」
「ん、そうだったよね」
「でもさ、そんな俺が全然気付けなかった事にこうして向き合っていられるのは、全部麻依のおかげ」
「そんなことないよ、諒が優しい人だからだよ」
「じゃあ俺が優しくなれたのは麻依のおかげだな」
これ以上言い合っても埒があかないと思ったのか、麻依が、ふふ、と笑んで口を閉じた。
「俺…本当に孤独だった。誰に対しても心から信じることがこわくて…人を愛することができなくて…」
「うん」
「でも、麻依に出逢って何もかも変わったんだ。気付いたら麻依を好きになってて…気付いたら自分の殻を破ってて…それと同時に自分の存在を自分で認めることができたんだ」
ふぅ、と軽く息を吐いて、麻依に向き合った。
「麻依が俺に生きる光をくれたんだ。麻依がいてくれたら俺は強くなれる。麻依を他のヤツに取られたくない。ずっと麻依に俺の隣で笑っていてほしい。…だから」
ポケットからベルベットの小箱を取り出し、蓋を開けて、麻依に向けた。
「俺と結婚してください」