太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
第七章 冬の嵐は油断大敵

嫉妬と不安と/side麻依

クリスマスは諒からプロポーズとお誕生日のお祝いっていう幸せなプレゼントをもらって、年越しは2人で雪がちらつく寒い中(諒はここぞとばかりにくっついて)二年詣りをして、穏やかに年明けを迎えている。


…ほんと、幸せすぎてこわいくらい。



今日は2人一緒のお休み。

諒の買い物につきあっていて、只今コーヒーショップで一休み。


ふーぅ
暖かいショッピングモールの中を厚手のコートを着て歩いてたから汗かいちゃった。

そんな体にアイスカフェラテが染みる。
ん、おいし。


「ねぇ麻依、結婚式どうする?」

…いきなりだね。
ちょっと驚いちゃったよ。

「結婚式?…そっか、そうだよね、どうしようか」

「麻依はどうしたい?」

「うーん、あまり具体的には考えてなかったけど、諒がいいならしたいな」

「じゃあさ、何かそういうの見に行かない?何て言うんだっけ…えっと…」

「ブライダルフェア?」

「あっそうそう、それ」

「じゃあとりあえず市内の式場とか見てみる?」

「そうだね!」

「ふふっ、諒、すごい乗り気だね」

「だって、麻依との結婚式だよ?すげぇ楽しみじゃん」

「あはっ、そうだね」

よく男の人はめんどくさがるって聞くけど、諒はそうではなさそう。ふふっ


「友達のお母さんがやってる式場がM市にあるんだけど、そこ見てみる?」

「へぇ、知り合いのとこなら安心だね」

「じゃあフェアの日時調べてみるね」


中学から大学まで一緒の、一番の親友『北条 千紗(ほうじょう ちさ)』のお母さんが社長を務める〝フルール ウェディングガーデン〞は、本館がM市にある。

本館は規模が大きく華やかな印象の式場。


「ん…本館のフェアの開催日と私達のお休みの合う日がなかなかないなぁ……あ、こっちの市内にある姉妹店のフェアなら行けそうだけど…」

ということで、まずは近場の系列店で結婚式の雰囲気や情報を下調べして、それから本命の本館に行く予定にした。

千紗もフルールで働いているから、一応そう考えていると話しておいた。



そして、諒と一緒のお休みの今日、市内にある〝フルール ウェディングガーデン 二番館〞へと向かった。

一応、今日行くつもりと言ってあるから、もしかしたら千紗も二番館に来てるかもしれないな。
会えたらいいけど、予約まではしてないからどうかなぁ。


受付でブライダルフェアの見学に来たと話すと、北見(きたみ)さんという女性が対応してくれた。

「希望すれば担当をつけてご相談できますが、どういたしますか?」

「今日はつけなくていいです。ね?」
「うん」

わかっていても諒が私に確認してくれる。
ふふっ、嬉しいな。


「かしこまりました。それではこちらのパンフレットとご案内をお持ちになって…」

と北見さんが優しくにこやかに見学の案内をしてくれている途中…

「もしかして諒お兄ちゃん?」

北見さんの横から、サラリと背中まであるストレートの髪を揺らしながら、かわいらしい女性が声をかけてきた。


「山下さん!」

北見さんが強めに名前を呼び牽制するも、その山下さんという女性はそれを意に介さず「諒お兄ちゃんだよね?」と更に声をかけてくる。


すると諒は訝しげに口を開いた。

「すみません…どちら様ですか?」

「小さい頃、施設で一緒だったミキって憶えてないかなぁ?1コ下の」

「施設……ミキ……あ、ミキって…俺に懐いてたミキ?…え?本当に?」


えっ…ほんとに知り合いなんだ…


「わぁ、憶えててくれたんだぁ!嬉しいっ!あ、ねぇねぇ、ミキが担当していい?一緒に見ようよ!いろいろ教えてあげる!」


え…ちょっと…何?
諒の知り合いとはいえ…ここのスタッフさんなんだよね?
その対応って…どうなの?

すると、そこで北見さんがピシャリと言い放った。

「山下さん、お客様に失礼です。こちらのお客様は担当はお付けしないので、他のお客様をお願いします」

結構厳しめな言い方なのに、山下さんは諦めずにグイグイ来た。


「ええ~?諒お兄ちゃん…あっ、諒くんて呼んでいい?いいよね!あのね、こういうのは案内があった方がよーっくわかるから!ねっ?」


ねぇ…何であなたが諒の腕を掴んでるの?

諒も…何でそれを拒まないの…?


そう思って諒を見たら…

「…そうだな、せっかくだし案内してもらうか」

って…その女性に答えた。


え…?断わらないの?

ねぇ…私の意見は?


「キャッ、よかったぁ!もちろんいいですよね?彼女さんも。私、昔の知り合いっていうか兄妹みたいな間柄なんで。久しぶりだしお話したいこともいっぱいあるし、ぜひご一緒したいな。ね?諒くん」

「あぁ…本当に久しぶりでわからなかったよ」

なんて言って、諒が嫌がる様子はない…

ユリナさんの時はあんなに困って嫌がってたのに…


「でしょぉ?私ももう大人だもん。けど全然かわいくないから誰も相手にしてくれないんだぁ。諒くんの彼女さんは美人でいいなぁ…私、絶対勝てないよね。そうでしょ?諒くん」

「いや…充分きれいなんじゃない?…なぁ麻依?」


何でそれを…私に振るの?

諒は私の気持ちが…わかってないの?



「麻依…?」

「…え?あぁ、うん…そうだね…」

「どうした?…顔色が悪いな、座って休もうか」

「あ、それがいいですよ!座って待ってて下さい。私が諒くんにバッチリ教えてくるから、彼女さんはここにいて大丈夫ですよ」


…私を邪魔者扱いするような言い種…


「…諒はどうするの?」

「とりあえず話は聞いておいた方がいいだろ?先に聞いておくよ。そしたら次の相談もしやすいだろうし」


…そうなんだ…

諒はそこに私がいなくてもいいんだ…



「そう…わかった。じゃあ…そこで待ってる」
目を合わせたくなくて、俯いて答えた。

「ん…なるべく早く戻るから」

「諒くん、行こ行こ!ミキがいろいろ教えてあげる!」

と…彼女は堂々と諒の腕に手を絡ませて、諒を連れていった。


それを見送り、とりあえず受付から離れたところのテーブル席に座った。


…はぁ…
私、何しに来たんだろう…

帰っちゃおうかな…

あの人も大概だけど…
諒も何で私を置いて…あの人と行くの?


私達の…結婚式じゃないの?



…ダメ…これ以上考えたら泣きそう…

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