太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
言い訳にしかならないけど/side諒
ブライダルフェアに来たけど…
麻依の具合がよくないみたいだから、無理させたくなくて座って待っててもらったんだ。
昨日の夜も俺のせいで寝かせるのが遅くなっちゃったから、寝不足で体調に響いたんじゃないかって心配で…
今日はおとなしく帰った方がいいのかも…
とも考えたけど、せっかく来たんだから、結婚式の情報は集めておきたかった。
そしたら次の相談もしやすくなって早く決められると思って。
…焦ってるワケじゃないけど、麻依との結婚が…結婚式がすげぇ嬉しくて、楽しみで、早く結婚式の準備に取り掛かりたかったんだ。
だから…俺のそんな気持ちも含めて、麻依にいいところを見せたかった。
喜んで欲しかった。
あわよくば…褒められたかった。
…ミキは、「担当する」と言う時点から強引だった。
麻依の知り合いのお店の手前もあって、断わって面倒なことになるよりはマシだと思ったから、話が聞けるならそれでもいいか…と、社交辞令というかそんな意味合いでお願いしたんだけど、結局のところ何の成果もなかった。
とりあえずパンフレット各種を集めてただけ。
ミキはただベタベタ俺に纏わりついてるだけで、話すことは自分語りのみ。
結婚式や披露宴の話なんて一つも出てこない。
こんな事なら帰ればよかった…とうんざりしていたら、途中でここの専務さんに別室に呼ばれたんだ。
それで専務さんについて行くと、ミキは役員室に行けと言われてその部屋を出ていった。
これでミキから解放されて麻依に会える…と安堵しながら俺も部屋から出ようとした時、その専務さんに「お客様」と話しかけられた。
「この度は弊社スタッフの失礼な行動によりご迷惑をおかけし、大変申し訳ございませんでした」
「いえ…」
「山下はこれまでも同じ様な事を何度もしており、最後通告を言い渡してありました。これで彼女は解雇されると思います」
「え…ちょっと待ってください、ミキはクビになるんですか?…でも今回のは俺も話に乗ってしまったのも悪いので…」
「…以上は専務として言わせてもらった。で、これからは会社とは関係ない、麻依ちゃんを知る一人の男として言わせてもらう」
…え、麻依ちゃん…?
…何?知り合いか?
「麻依ちゃんは俺の妹の友達。俺は北条 幸成、ここの専務。妹は北条 千紗つって麻依ちゃんとは中学からの友達。で、ここの部長。それで、俺らの母親がここの社長ね」
あぁ…
「聞いてます、友達のお母さんが経営している式場だと」
そういうことか。
「で、山下のことだけど。お前が話に乗ろうが乗るまいが、接客業としてあるまじき行為をしているんだよ。ましてやブライダルに携わるというのに新郎に手を出そうとか言語道断。それにお前がそんな甘っちょろい考えをしていると、あの女にしてやられるぞ。クビで無職になるんだぜ?お前に永久就職させて、とか言いそうだよな」
「え…」
それは嫌だな…と困惑していると、思いもよらないことを告げられた。
「あぁ、麻依ちゃんは一人で帰ったから」
…え?…今なんて…
え、帰った?
ズキン!とみぞおちの辺りが鈍く痛み、体中を冷たい何かが走った。
麻依、帰ったって…え?何で?
一人で帰った?何で俺を置いて?
もう何から考えたらいいのかわからないくらい、頭の中がパニックに陥った。
そんな俺に、北条さんは厳しい眼差しを向ける。
「お前さ、ブライダルフェアに来といて、妻になる彼女を放ったらかして他の女と仲良く長話って、どういうことかわかってんのか?」
「放ったらかしだなんて…しかも仲良くなんてしてないですよ…それに昔の知り合いだし、無碍にできないというか…」
「お前らの事情とか関係ないんだよ。お前がやったのは、よりによって結婚式の相談の場で、彼女以外の女とベッタリくっついて楽しく話してただけだ」
「そんなつもりは…」
「お前はそうでも、周りや…一番大事な麻依はそう見てねぇんだよ!麻依は傷付いたんだよ!」
え、今…麻依、って…
「お前さ、見るからにモテそうだけど、女の気持ちとかわからねぇの?」
麻依の…気持ち…
すると北条さんが外を見ながら話し出した。
「…俺も人のことは言えないんだけど。…俺さぁ、高校の時に好きな年下の女の子がいてさ。俺は大学生になったけど高校生に手は出せなくて、その子が大学生になった時に告白して付き合うようになったんだよ。すげー嬉しかったし大事にしてたからうまくいってたんだけど、俺が大学を卒業して社会人になったらさ、新しい生活がすごく刺激的で。その子との付き合いに安心しきっちゃってたのもあって、デートとか連絡が二の次になった。しかも会社の同期の女と2人で食事に行ったところも見られててさ。その同期を好きな気持ちも浮気する気も全くなかったんだけど、彼女とのデートよりそっちを優先するとかはまずかったよな」
ふ…と短く息を吐いて、北条さんは続けた。
「…俺はさ、もう結婚する気でいたわけよ、その子と。だからそれでもうまくいっていると思ってたんだけど、気付いた時には彼女の気持ちはもう離れちゃってて…別れを告げられた。俺は本当に好きだったからヨリを戻したくて頑張ったけど、その子の傷ついた気持ちは治せなくて…戻れなかった。あれはマジで何か月も凹んだよ。俺はなんてバカだったんだろって…後悔しても遅かったんだけどさ。…その子の事は今でも狙いたいくらいだよ、マジでね」
北条さんは俺を見て、今度はフウッと大きく一息吐いた。
「うまくいっている時はお互いに絶対に揺るがないと思える気持ちも、傷つけられたら一瞬で脆くなるもんなんだ。その傷つける行為が続けば続くほど脆くなって、割れる。…その脆くなった隙に麻依ちゃんを狙おうとする奴は…きっと近くにもいるはずだぞ」
「…そうですね…麻依を狙っている人なら知ってるだけでも何人か…」
「お前はそれでいいのか?麻依ちゃんを他のヤツに取られてもいいのか?」
「嫌ですよ!絶対誰にも渡したくない!」
「じゃあ麻依ちゃんの気持ちをしっかりと考えろよ。…お前は浮かれてんだろ、麻依ちゃんと結婚できることに。…でも麻依ちゃんの優しさに甘えすぎるな。いくら婚約していても婚約破棄って言葉もあるしな、油断できねぇぞ」
〝婚約破棄〞という言葉がザクリと胸につき刺さる…
「もうこれ以上、麻依ちゃんを傷つけるなよ」
「はい…わかってます」
…俺…本当にダメな男だな…
「あぁ、麻依ちゃんはタクシーで帰したから。…いいか、お前の気持ちも考えもあるだろうが、自分のした行動と、何より麻依ちゃんは傷ついてるってことは憶えておけよ」
「はい、それもわかってます」
自己嫌悪…
「まぁ…また麻依ちゃんとブライダルフェアに来てくれるのを楽しみにしてるよ」
北条さん…
「ありがとうございます。頑張ります」
「あぁ」
大人だな…
北条さんこそモテそうだよな、見た目も中身もカッコいい大人で。
それにひきかえ…
俺ってここまで周りが見えてなくて自分勝手なヤツだったなんて…
…はぁ…
それから…俺は一人で家に戻った。
麻依に会いたい…
声が聞きたい…
でも一人で帰るってことは、俺を避けてるんだよな…
…避けられるなんて…初めてだよな…?
く……すげぇ苦しい…
胸が痛い…苦しい…
嫌われんのがすげぇこわい…
俺が悪いんだけど…
こわいよ…
麻依の具合がよくないみたいだから、無理させたくなくて座って待っててもらったんだ。
昨日の夜も俺のせいで寝かせるのが遅くなっちゃったから、寝不足で体調に響いたんじゃないかって心配で…
今日はおとなしく帰った方がいいのかも…
とも考えたけど、せっかく来たんだから、結婚式の情報は集めておきたかった。
そしたら次の相談もしやすくなって早く決められると思って。
…焦ってるワケじゃないけど、麻依との結婚が…結婚式がすげぇ嬉しくて、楽しみで、早く結婚式の準備に取り掛かりたかったんだ。
だから…俺のそんな気持ちも含めて、麻依にいいところを見せたかった。
喜んで欲しかった。
あわよくば…褒められたかった。
…ミキは、「担当する」と言う時点から強引だった。
麻依の知り合いのお店の手前もあって、断わって面倒なことになるよりはマシだと思ったから、話が聞けるならそれでもいいか…と、社交辞令というかそんな意味合いでお願いしたんだけど、結局のところ何の成果もなかった。
とりあえずパンフレット各種を集めてただけ。
ミキはただベタベタ俺に纏わりついてるだけで、話すことは自分語りのみ。
結婚式や披露宴の話なんて一つも出てこない。
こんな事なら帰ればよかった…とうんざりしていたら、途中でここの専務さんに別室に呼ばれたんだ。
それで専務さんについて行くと、ミキは役員室に行けと言われてその部屋を出ていった。
これでミキから解放されて麻依に会える…と安堵しながら俺も部屋から出ようとした時、その専務さんに「お客様」と話しかけられた。
「この度は弊社スタッフの失礼な行動によりご迷惑をおかけし、大変申し訳ございませんでした」
「いえ…」
「山下はこれまでも同じ様な事を何度もしており、最後通告を言い渡してありました。これで彼女は解雇されると思います」
「え…ちょっと待ってください、ミキはクビになるんですか?…でも今回のは俺も話に乗ってしまったのも悪いので…」
「…以上は専務として言わせてもらった。で、これからは会社とは関係ない、麻依ちゃんを知る一人の男として言わせてもらう」
…え、麻依ちゃん…?
…何?知り合いか?
「麻依ちゃんは俺の妹の友達。俺は北条 幸成、ここの専務。妹は北条 千紗つって麻依ちゃんとは中学からの友達。で、ここの部長。それで、俺らの母親がここの社長ね」
あぁ…
「聞いてます、友達のお母さんが経営している式場だと」
そういうことか。
「で、山下のことだけど。お前が話に乗ろうが乗るまいが、接客業としてあるまじき行為をしているんだよ。ましてやブライダルに携わるというのに新郎に手を出そうとか言語道断。それにお前がそんな甘っちょろい考えをしていると、あの女にしてやられるぞ。クビで無職になるんだぜ?お前に永久就職させて、とか言いそうだよな」
「え…」
それは嫌だな…と困惑していると、思いもよらないことを告げられた。
「あぁ、麻依ちゃんは一人で帰ったから」
…え?…今なんて…
え、帰った?
ズキン!とみぞおちの辺りが鈍く痛み、体中を冷たい何かが走った。
麻依、帰ったって…え?何で?
一人で帰った?何で俺を置いて?
もう何から考えたらいいのかわからないくらい、頭の中がパニックに陥った。
そんな俺に、北条さんは厳しい眼差しを向ける。
「お前さ、ブライダルフェアに来といて、妻になる彼女を放ったらかして他の女と仲良く長話って、どういうことかわかってんのか?」
「放ったらかしだなんて…しかも仲良くなんてしてないですよ…それに昔の知り合いだし、無碍にできないというか…」
「お前らの事情とか関係ないんだよ。お前がやったのは、よりによって結婚式の相談の場で、彼女以外の女とベッタリくっついて楽しく話してただけだ」
「そんなつもりは…」
「お前はそうでも、周りや…一番大事な麻依はそう見てねぇんだよ!麻依は傷付いたんだよ!」
え、今…麻依、って…
「お前さ、見るからにモテそうだけど、女の気持ちとかわからねぇの?」
麻依の…気持ち…
すると北条さんが外を見ながら話し出した。
「…俺も人のことは言えないんだけど。…俺さぁ、高校の時に好きな年下の女の子がいてさ。俺は大学生になったけど高校生に手は出せなくて、その子が大学生になった時に告白して付き合うようになったんだよ。すげー嬉しかったし大事にしてたからうまくいってたんだけど、俺が大学を卒業して社会人になったらさ、新しい生活がすごく刺激的で。その子との付き合いに安心しきっちゃってたのもあって、デートとか連絡が二の次になった。しかも会社の同期の女と2人で食事に行ったところも見られててさ。その同期を好きな気持ちも浮気する気も全くなかったんだけど、彼女とのデートよりそっちを優先するとかはまずかったよな」
ふ…と短く息を吐いて、北条さんは続けた。
「…俺はさ、もう結婚する気でいたわけよ、その子と。だからそれでもうまくいっていると思ってたんだけど、気付いた時には彼女の気持ちはもう離れちゃってて…別れを告げられた。俺は本当に好きだったからヨリを戻したくて頑張ったけど、その子の傷ついた気持ちは治せなくて…戻れなかった。あれはマジで何か月も凹んだよ。俺はなんてバカだったんだろって…後悔しても遅かったんだけどさ。…その子の事は今でも狙いたいくらいだよ、マジでね」
北条さんは俺を見て、今度はフウッと大きく一息吐いた。
「うまくいっている時はお互いに絶対に揺るがないと思える気持ちも、傷つけられたら一瞬で脆くなるもんなんだ。その傷つける行為が続けば続くほど脆くなって、割れる。…その脆くなった隙に麻依ちゃんを狙おうとする奴は…きっと近くにもいるはずだぞ」
「…そうですね…麻依を狙っている人なら知ってるだけでも何人か…」
「お前はそれでいいのか?麻依ちゃんを他のヤツに取られてもいいのか?」
「嫌ですよ!絶対誰にも渡したくない!」
「じゃあ麻依ちゃんの気持ちをしっかりと考えろよ。…お前は浮かれてんだろ、麻依ちゃんと結婚できることに。…でも麻依ちゃんの優しさに甘えすぎるな。いくら婚約していても婚約破棄って言葉もあるしな、油断できねぇぞ」
〝婚約破棄〞という言葉がザクリと胸につき刺さる…
「もうこれ以上、麻依ちゃんを傷つけるなよ」
「はい…わかってます」
…俺…本当にダメな男だな…
「あぁ、麻依ちゃんはタクシーで帰したから。…いいか、お前の気持ちも考えもあるだろうが、自分のした行動と、何より麻依ちゃんは傷ついてるってことは憶えておけよ」
「はい、それもわかってます」
自己嫌悪…
「まぁ…また麻依ちゃんとブライダルフェアに来てくれるのを楽しみにしてるよ」
北条さん…
「ありがとうございます。頑張ります」
「あぁ」
大人だな…
北条さんこそモテそうだよな、見た目も中身もカッコいい大人で。
それにひきかえ…
俺ってここまで周りが見えてなくて自分勝手なヤツだったなんて…
…はぁ…
それから…俺は一人で家に戻った。
麻依に会いたい…
声が聞きたい…
でも一人で帰るってことは、俺を避けてるんだよな…
…避けられるなんて…初めてだよな…?
く……すげぇ苦しい…
胸が痛い…苦しい…
嫌われんのがすげぇこわい…
俺が悪いんだけど…
こわいよ…