太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
ブライダルフェアに行こう!/side諒
今日はブライダルフェアの仕切り直し!
ってことで、本命の式場に麻依から予約を取ってもらった。
【フルール ウェディングガーデン 本館】
今日は平日ということもあって、土日のフェアよりは空いているらしい。
そうだ、北条さんに会ったらちゃんとお礼が言いたいな。
あれからミキについては何も聞いてないけど、クビになったんだろうか。
まぁ俺にはどうしようもないことだけど…
「あっ、麻依!いらっしゃい!」
「千紗!」
麻依が小さく手を振る。
麻依の友達の千紗さんが、俺達の予約時間に式場のエントランスで待っていてくれた。
千紗さんは背が高くてショートカットが似合う、ひまわりみたいな雰囲気の女性だ。
麻依は何だろうな。
薔薇…百合…スイートピー…かすみ草…
ん、いろんな雰囲気を持ってるよな。
その都度、それぞれの美しさに見惚れてしまうんだ。
「佐伯さんもいらっしゃいませ!二人で来てくれるのを楽しみにしてましたよ!」
ハキハキとした語り口で話す、明るい笑顔の千紗さんに、ロビーの窓際のテーブルに促された。
ロビーは天井が高く、楕円の弧を描くガラス張りの向こうに庭が広がっている。
今は冬だからわからないが、夏場は青々とした芝生が一面に見えるらしい。
この場所もソレイユと同じく少し小高い丘にあるので見張らしもよく、とても良いロケーションの式場だと思う。
…そんな話をしながら2人で外を眺めていると、後ろから声が掛かった。
「佐伯さん、麻依さん、今日は本館にお越しいただきありがとうございます!」
「あっ、北見さん!こちらこそわざわざすみません」
麻依がそう声をかけたので、俺もペコリと頭を下げた。
麻依の話では、北見さんは今日は休みの予定だったのだが、俺達のために来てくれたのだそうだ。
うん、優しげな雰囲気の人だな。
そこへ千紗さんがトレーに飲み物を乗せてやってきた。
「コーヒーでよかったかな、ミルクとお砂糖はこれね」
「ありがとう、千紗」
「すみません、いただきます」
「今、母と兄貴も来るからちょっと待ってて」
「えっ、おばさまも?」
「うん、母も麻依に久しぶりに会いたいって言っててさ」
「そうなんだ、嬉しいな」
「麻依は社長さんとも親しいの?」
「うん。昔、千紗のおうちに遊びに行くと手作りのお菓子をご馳走してもらったりして」
「あー!すごいお菓子作りにハマった時期があったよね!あの時は私も兄貴も太りそうで怖かったんだよねー。今はたまにしか作らないからいいけどさ」
「あら、そうなの?おいしいって喜んで食べてたのにねぇ」
「あっお母さん。だって限度があるでしょー?」
「そうそう、麻依ちゃんがお土産にたくさん貰ってってくれたから助かったけどさ」
「あぁ兄貴も来たね」
社長、専務、部長と北見さんが揃うと、まず謝罪の言葉を掛けられた。
「この度は当社のスタッフがご迷惑をお掛けして、本当に申し訳ございませんでした」
社長の言葉に、他のみんなが一斉に頭を下げる。
「そんな、とんでもないです」
元はと言えば俺の態度で拗らせてしまったのだから。
「そうです。私が話を大きくしてしまったのが原因なので…」
「いや、麻依は全く悪くないから」
俺は首を横に振って、テーブルの上の麻依の左手を握った。
その薬指には、俺が贈った指環が目映く光っている。
麻依が俺を見て、ふ、と可愛い笑顔を見せ、小さく「ありがと」と微笑んでくれた。
だから、俺もありがとうの意味を込めて「ん」と微笑む。
〝阿吽の呼吸〞って言うと大袈裟だけど、お互いの思いが何となくわかって「今はこっちが折れた方がいいな」ってわかることが増えた。
まぁだいたいは麻依が折れてくれるんだけどさ。
そんな俺達を見た千紗さんが「これがほんとの2人なんだね。なんかすごいお似合い!」と明るい笑顔で言ってくれた。
その言葉で、俺達が見つめあってる事に麻依がハッと気付き、更に、俺に握られている手を見てワッと驚いて振りほどこうとするから、俺も振りほどかれまいとぎゅっと握る。
…となると、必然的に握りあった手を振るだけの絵になり、その状況に気付いた麻依が赤くなって、振りほどくのを諦めた。
「もぉ…」
そんな麻依が可愛くてクスクス笑ってたら、北見さんが「いいですね、見ててすごく幸せな気分になります」って言ってくれた。
「あ、すみません、なんかイチャイチャしてましたね」
まだ麻依が可愛くてクスクスしてたら「そうだよ、こんなとこで失礼だよ?もぅ」って麻依が赤い顔で言うから…もっと可愛くなるじゃん?
「でも俺らのイチャイチャはこんなもんじゃないだろ?」
そう耳元で言うと、麻依が赤い顔で俺の言葉に『ハアッ!?』と予想通りの反応を見せるから、おかしくってアハハッて笑ってしまった。
「ごめん、可愛くてからかった」
ほんとはまだ笑ってたいけどクククと笑いを噛み殺す。
「麻依がこんなに男の人に翻弄されるとはねー、意外だわー」
千紗さんが目を丸くして驚いたように言う。
「いやもうやめて、千紗。あー恥ずかしいってば…あー熱い」
赤い顔を手で顔を扇ぐ麻依がまた可愛いんだけど、これ以上からかうと怒られそうだもんな。やめとこ。
「あ、ねぇ千紗、そういえば山下さんてどうなったの?」
「そうだったね、それも伝えようと思って」
千紗がおばさまに「私から話すね」と断りを入れて話し出した。
「山下は前からああいう態度が目立っててさ。新婦さんが怒ってウチの式場を使わないってだけでも大きな損害なのに、スタッフが新郎を誘惑するなんて噂がたったりしたら結婚式場として致命的な痛手を被るの。とりあえず今まではなんとか大きな影響は出さずに済んだけどね。…だから前から手を焼いてはいたんだ」
「そうなんだ…」
「実はその他にもいろいろと問題があって辞めてもらうことにしたから。とりあえず今日は有給消化で休んでもらってる」
他にも問題があって、か…気になるな。
「麻依に迷惑かける事になる位なら、早く辞めさせてればよかった…」
「でも逆に考えたら、私達でよかったんだよ、千紗」
「何で!そんなのダメだよ!」
「もしもだよ?相手が違えばそれこそ大きな影響が出てたかも知れないんだよ?でも、たまたま目をつけられたのが私達で、しかもこうして内部事情まで話してもらえる間柄だから、最終的にセーフだったんだし。それに…諒と私にもいい機会だったと思うから」
ね?と麻依が俺を見るから、俺も首を縦に振る。
「麻依の言う通りです。俺達にとってもこのタイミングでよかったんだと思います。なので本当に気になさらないでください」
「怪我の功名だよ、千紗」
ふふっと笑う麻依がとても神々しく見えた。
「麻依ー…ありがとう」
「麻依ちゃん、ありがとね!式はうんとサービスするからね!」
「おばさま、それはいいですから。それでしたらまた手作りのお菓子がいいです、ふふっ」
俺に「おばさまのお菓子、お店並みに美味しいんだよ」と教えてくれた。
「それならお安い御用よ~!最近はマカロンに凝ってるの。おすすめよ!」
「あー、お母さんのマカロンは私も好きなんだ!」
「諒、マカロンだって!」
「ん、頂けるなら嬉しいな!楽しみだな」
素直に顔がほころぶ。
「諒くん、マカロン好きなの?」
幸成さんが話しかけてくれた。
「はい、甘いものは和洋問わず好きですけど、特にマカロンが大好きです」
「へぇ、甘いものが好きなのって、意外って言われない?」
「はは、何故だか昔からよく言われます」
「俺もそう。俺は洋菓子とスイーツ派だけど、〝甘いもの好き〞って言うと『意外~』って反応されるんだよな」
「兄貴、カフェでフルーツてんこもりのパフェ食べてたら、通りすがりの見知らぬ女に『え~残念』て言われたことあったよね、あははは」
「な、あれはマジでムカついた」
「さてと、じゃあそろそろ目的のブライダルフェアに行きますか」
千紗さんがそう声をかけてくれたのだけど、俺は幸成さんに話がしたくて、2人で席を外した。
ってことで、本命の式場に麻依から予約を取ってもらった。
【フルール ウェディングガーデン 本館】
今日は平日ということもあって、土日のフェアよりは空いているらしい。
そうだ、北条さんに会ったらちゃんとお礼が言いたいな。
あれからミキについては何も聞いてないけど、クビになったんだろうか。
まぁ俺にはどうしようもないことだけど…
「あっ、麻依!いらっしゃい!」
「千紗!」
麻依が小さく手を振る。
麻依の友達の千紗さんが、俺達の予約時間に式場のエントランスで待っていてくれた。
千紗さんは背が高くてショートカットが似合う、ひまわりみたいな雰囲気の女性だ。
麻依は何だろうな。
薔薇…百合…スイートピー…かすみ草…
ん、いろんな雰囲気を持ってるよな。
その都度、それぞれの美しさに見惚れてしまうんだ。
「佐伯さんもいらっしゃいませ!二人で来てくれるのを楽しみにしてましたよ!」
ハキハキとした語り口で話す、明るい笑顔の千紗さんに、ロビーの窓際のテーブルに促された。
ロビーは天井が高く、楕円の弧を描くガラス張りの向こうに庭が広がっている。
今は冬だからわからないが、夏場は青々とした芝生が一面に見えるらしい。
この場所もソレイユと同じく少し小高い丘にあるので見張らしもよく、とても良いロケーションの式場だと思う。
…そんな話をしながら2人で外を眺めていると、後ろから声が掛かった。
「佐伯さん、麻依さん、今日は本館にお越しいただきありがとうございます!」
「あっ、北見さん!こちらこそわざわざすみません」
麻依がそう声をかけたので、俺もペコリと頭を下げた。
麻依の話では、北見さんは今日は休みの予定だったのだが、俺達のために来てくれたのだそうだ。
うん、優しげな雰囲気の人だな。
そこへ千紗さんがトレーに飲み物を乗せてやってきた。
「コーヒーでよかったかな、ミルクとお砂糖はこれね」
「ありがとう、千紗」
「すみません、いただきます」
「今、母と兄貴も来るからちょっと待ってて」
「えっ、おばさまも?」
「うん、母も麻依に久しぶりに会いたいって言っててさ」
「そうなんだ、嬉しいな」
「麻依は社長さんとも親しいの?」
「うん。昔、千紗のおうちに遊びに行くと手作りのお菓子をご馳走してもらったりして」
「あー!すごいお菓子作りにハマった時期があったよね!あの時は私も兄貴も太りそうで怖かったんだよねー。今はたまにしか作らないからいいけどさ」
「あら、そうなの?おいしいって喜んで食べてたのにねぇ」
「あっお母さん。だって限度があるでしょー?」
「そうそう、麻依ちゃんがお土産にたくさん貰ってってくれたから助かったけどさ」
「あぁ兄貴も来たね」
社長、専務、部長と北見さんが揃うと、まず謝罪の言葉を掛けられた。
「この度は当社のスタッフがご迷惑をお掛けして、本当に申し訳ございませんでした」
社長の言葉に、他のみんなが一斉に頭を下げる。
「そんな、とんでもないです」
元はと言えば俺の態度で拗らせてしまったのだから。
「そうです。私が話を大きくしてしまったのが原因なので…」
「いや、麻依は全く悪くないから」
俺は首を横に振って、テーブルの上の麻依の左手を握った。
その薬指には、俺が贈った指環が目映く光っている。
麻依が俺を見て、ふ、と可愛い笑顔を見せ、小さく「ありがと」と微笑んでくれた。
だから、俺もありがとうの意味を込めて「ん」と微笑む。
〝阿吽の呼吸〞って言うと大袈裟だけど、お互いの思いが何となくわかって「今はこっちが折れた方がいいな」ってわかることが増えた。
まぁだいたいは麻依が折れてくれるんだけどさ。
そんな俺達を見た千紗さんが「これがほんとの2人なんだね。なんかすごいお似合い!」と明るい笑顔で言ってくれた。
その言葉で、俺達が見つめあってる事に麻依がハッと気付き、更に、俺に握られている手を見てワッと驚いて振りほどこうとするから、俺も振りほどかれまいとぎゅっと握る。
…となると、必然的に握りあった手を振るだけの絵になり、その状況に気付いた麻依が赤くなって、振りほどくのを諦めた。
「もぉ…」
そんな麻依が可愛くてクスクス笑ってたら、北見さんが「いいですね、見ててすごく幸せな気分になります」って言ってくれた。
「あ、すみません、なんかイチャイチャしてましたね」
まだ麻依が可愛くてクスクスしてたら「そうだよ、こんなとこで失礼だよ?もぅ」って麻依が赤い顔で言うから…もっと可愛くなるじゃん?
「でも俺らのイチャイチャはこんなもんじゃないだろ?」
そう耳元で言うと、麻依が赤い顔で俺の言葉に『ハアッ!?』と予想通りの反応を見せるから、おかしくってアハハッて笑ってしまった。
「ごめん、可愛くてからかった」
ほんとはまだ笑ってたいけどクククと笑いを噛み殺す。
「麻依がこんなに男の人に翻弄されるとはねー、意外だわー」
千紗さんが目を丸くして驚いたように言う。
「いやもうやめて、千紗。あー恥ずかしいってば…あー熱い」
赤い顔を手で顔を扇ぐ麻依がまた可愛いんだけど、これ以上からかうと怒られそうだもんな。やめとこ。
「あ、ねぇ千紗、そういえば山下さんてどうなったの?」
「そうだったね、それも伝えようと思って」
千紗がおばさまに「私から話すね」と断りを入れて話し出した。
「山下は前からああいう態度が目立っててさ。新婦さんが怒ってウチの式場を使わないってだけでも大きな損害なのに、スタッフが新郎を誘惑するなんて噂がたったりしたら結婚式場として致命的な痛手を被るの。とりあえず今まではなんとか大きな影響は出さずに済んだけどね。…だから前から手を焼いてはいたんだ」
「そうなんだ…」
「実はその他にもいろいろと問題があって辞めてもらうことにしたから。とりあえず今日は有給消化で休んでもらってる」
他にも問題があって、か…気になるな。
「麻依に迷惑かける事になる位なら、早く辞めさせてればよかった…」
「でも逆に考えたら、私達でよかったんだよ、千紗」
「何で!そんなのダメだよ!」
「もしもだよ?相手が違えばそれこそ大きな影響が出てたかも知れないんだよ?でも、たまたま目をつけられたのが私達で、しかもこうして内部事情まで話してもらえる間柄だから、最終的にセーフだったんだし。それに…諒と私にもいい機会だったと思うから」
ね?と麻依が俺を見るから、俺も首を縦に振る。
「麻依の言う通りです。俺達にとってもこのタイミングでよかったんだと思います。なので本当に気になさらないでください」
「怪我の功名だよ、千紗」
ふふっと笑う麻依がとても神々しく見えた。
「麻依ー…ありがとう」
「麻依ちゃん、ありがとね!式はうんとサービスするからね!」
「おばさま、それはいいですから。それでしたらまた手作りのお菓子がいいです、ふふっ」
俺に「おばさまのお菓子、お店並みに美味しいんだよ」と教えてくれた。
「それならお安い御用よ~!最近はマカロンに凝ってるの。おすすめよ!」
「あー、お母さんのマカロンは私も好きなんだ!」
「諒、マカロンだって!」
「ん、頂けるなら嬉しいな!楽しみだな」
素直に顔がほころぶ。
「諒くん、マカロン好きなの?」
幸成さんが話しかけてくれた。
「はい、甘いものは和洋問わず好きですけど、特にマカロンが大好きです」
「へぇ、甘いものが好きなのって、意外って言われない?」
「はは、何故だか昔からよく言われます」
「俺もそう。俺は洋菓子とスイーツ派だけど、〝甘いもの好き〞って言うと『意外~』って反応されるんだよな」
「兄貴、カフェでフルーツてんこもりのパフェ食べてたら、通りすがりの見知らぬ女に『え~残念』て言われたことあったよね、あははは」
「な、あれはマジでムカついた」
「さてと、じゃあそろそろ目的のブライダルフェアに行きますか」
千紗さんがそう声をかけてくれたのだけど、俺は幸成さんに話がしたくて、2人で席を外した。