太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
「結婚式って決めることがこんなにあるんだな」
「そうだね、実際にその立場にならないとわからないものだよね」
「でも俺は毎回楽しいんだ。麻依と俺とで気に入ったものを作っていくの、すげぇ楽しくてさ」
「私も!結婚式までの過程も幸せがたくさんあるよね」
「だよなー。いいもんだな、結婚式って。これなら麻依と何回でもしたいな」
「あはは、そんな何回もなんてしないけどね。でも男の人でそこまで楽しむ人って珍しいみたいだよね」
「な、どーしてだろ。楽しいのになぁ」
ある日の打ち合わせのあと、隣接のカフェでお茶しながらそんなことを話していると「諒くん」という声がして、2人で振り向くと…山下ミキさんが立っていた。
「何かな?」
諒が笑顔もなく返す。
「…この人と…結婚するの…?」
「そうだけど」
「…ねぇ、ミキは?ミキと結婚してくれないの?」
「僕はこの人と結婚したいから」
『この人』
…諒はあえて私の名前を出さないでるんだ…
ユリナさんの件を思い出した。
もしかしたらミキさんは私の名前を知っているかも知れない。
けど、諒から女性の名前が出ると、それだけで挑発になるかもしれないから…
今はそう考える事ができる。
「ミキ、お仕事辞めさせられたの…だから私をお嫁さんにしてほしいんだけどな」
「僕はこの人を愛しているから結婚するんだ。だから他の人との結婚は考えられない」
「じゃあこの人がいなければ…ミキを選んでくれるの?」
「いや、選ばない」
「どうして!?」
「好きでも愛してもいないから」
「……」
ミキさんは、淡々と返す諒の態度に少し驚いているみたい。
「それにあなたには…相手がいるんじゃないのかな」
「…いないけど…」
「相手の人、フリーになったんでしょ?その人と結婚したらいいと思うけど」
その言葉に、ミキさんがビクッとカラダを奮わせた。
…ていうか、どういう事?
何で諒はそんな事をしってるの…?
「そこまで愛を貫いたんだから、その人を選ぶべきだと思うよ」
「…なんでそれ…」
「ちょっとね」
「…ここの人に聞いたの?」
「いや、別ルートで」
するとミキさんがしゃがんで俯いた。
「でも…来てくれないんだもん…なんで誰も私を選んでくれないの…?っく……」
えっ…何?どうしたの?泣いてるの?
訳がわからず気持ちだけオロオロしていたら、諒がミキさんに冷静な声で話しかけた。
「あの人でしょ?あなたを迎えに来たみたいだよ」
「ぐすっ……えっ…?あ…」
ミキさんが顔を上げた。
二人につられてそちらを見ると、カフェの窓から、こちらに歩いてくる男性が見えた。
30代後半くらいかな。
「まったくさ…自分に気を引かせたいからって、俺や他の男を使うのはやめてくれないかな。まぁもうその必要はないと思うけど」
「っく……諒くん…ごめんなさい……彼女さんも…ごめんなさい……」
え?え?どういう事?
ミキさんは諒が好きなんじゃないの…?
そこへ、その男性がカフェに入ってきた。
そして私達のいるところに来た男性が、しゃがんでいるミキさんの肩を撫でて言った。
「ミキ…ごめんな。遅くなったけど、僕と一緒に来てくれないか」
「伸一郎さん…」
「ちゃんとケジメはつけてきたから。仕事も一から探さないとだけど…僕と一緒に生きてくれないか、ミキ」
「…いいの?私でいいの?奥さんのことが好きなんじゃないの?だからずっと別れなかったんじゃないの?」
「詳しくは後で話すけど、本当は僕の方が先に妻…いや、元妻から裏切られてたんだ。それで色々と時間がかかってミキを待たせてしまったけど……これからは僕はミキと一緒に生きていきたいんだ」
「伸一郎さん……私も一緒がいい…」
そのシンイチロウさんて人がこちらを向いた。
「この度は私達のせいで大変ご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ございませんでした」
と深く長く頭を下げた隣で、ミキさんも「申し訳ございませんでした」と同じく一礼して、2人はカフェを出ていった。
「ふぅ……これで無事に終わったな」
諒が大きく息を吐いた。
「ねぇ…どういうこと…?」
「ん?」
「私、何がなんだかわからないんだけど…」
「…ん、そろそろ帰ろうか。車の中で話すよ」