太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
「あぁ、やっぱり麻依だったんだね…」
ドクッドクッ…と心臓の音が体に響く。
「……あ、今お持ちしますので…こちらに掛けてお待ちいただけますか」
何とか言葉を振り絞り、フロントに戻った。
隼人さん…
私のトラウマを作った人…と…
まさか職場(ここ)で会うなんて…
あっ、そんなことより、諒に持ち主が現れたって言わなきゃ。
…内線でいっか。
『はい、佐伯です』
「フロント、羽倉です。諒、さっきの落とし物の持ち主の方がお見えになったから、こっちでお返ししておくね」
『…麻依?どうした?…何かあったか?』
「…っえ?何で?」
『何か声がおかしい』
「っ…そんなこと…」
『すぐ行くから待ってて』ガチャ
え…声…?
おかしいってなに…?
すると諒が駆けてきてくれた。
「麻依、どうした?大丈夫か?何があった?」
「え…いや、何も…ていうか、忘れ物の持ち主の人が……その…トラウマの人だった…んだけど、大丈夫!」
「それなら俺が出るよ」
「ん、諒の顔見たら勇気が出てきたから、大丈夫」
「そうか…?もし辛くなったらすぐに呼べよ、ここにいるから」
「ありがとう…すごく心強いよ」
「ん…」
おでこにちゅってして、私を送り出してくれた。
「遅くなってすみません、こちらでお間違いないですか?」
「あぁ、コレだ!ありがとう」
「いえ、こちらこそすぐに見つけられずにすみませんでした」
「…麻依は相変わらず綺麗だな…いや、もっと素敵になったよ」
「!……いえ…」
あの頃よりも落ち着いた、優しい表情で話す隼人さんに…どういう顔で応対したらいいいのか…わからない…
「麻依……あの時は傷つけてごめん。ずっと…本当に申し訳なく思ってた」
え…?
なに…?
「俺…麻依に頼ってほしかったんだ。麻依に甘えてほしかった」
「……」
「勝手な言い分なのはわかってる。あの頃…ちょうど仕事も波にのってて金もそこそこあって…そこに若さも相まって怖いものナシの天狗になってた時期だった。だから、麻依になんでもしてあげたかったし何でも買ってやりたかった。結婚したら俺が養って、仕事も辞めさせてあげるとか思ってた」
「……」
「でも麻依はいつでも真面目でまっすぐで…俺の面倒さえみてくれようとした。…俺はそんな麻依が眩しかった。俺に頼らなくても一人で輝ける麻依が俺より上に見えた。…それが悔しいっていうか虚しいっていうか…一緒にいたら俺の方が頼りそうだった、甘えそうだった」
「……」
「…今でこそ、素直に甘えればいいのにって思えるけど、あの頃の俺はそうじゃなかった。何でも俺を頼りにしてほしかった…それこそが男の役割だと思ってた…。だから…頼りにされない事が…心配されることが情けなくて…浮気したって嘘までついて…麻依を遠ざけた…」
「浮気が…嘘?」
「あぁ…あれは嘘なんだ…。浮気なんてしてない。馬鹿な見栄さ。…ずっと麻依しか見えてなかったから、浮気なんてできやしないんだ」
「そう、なんだ…」
「麻依に言ったことも…全部俺の僻みだった……あれから年を重ねる毎に麻依にしたことの重さが積もっていって苦しかった…でも麻依にそれだけのことをしたんだからな…」
「………」
なんて言葉を返したらいいんだろう…
まだ何も考えられない…
「麻依は…結婚してるの?」
「えっと…今年の6月にします」
「…そっか、おめでとう。麻依に愛せる人がいるのなら安心した」
「隼人さんは…」
「俺はまだ。あ、この数珠は甥っ子のなんだ。前の法事の時から俺のバッグに入ってたんだけど、今日何かの拍子に落としたみたいでね」
「そうですか…」
「正直に話すとね、まだ麻依が独身だったら、謝って許して貰えるなら…もう一度やり直したいと思ってた、ずっと。でも結婚するんだもんな、もう諦めるよ」
「……」
「どんな人?旦那になる彼氏は。優しい人なんだろうなぁ、きっと」
「えぇ、優しくしてますよ」
上から愛しい人の声が聞こえたと思ったら、私の肩に大きな手の温もりを感じた。
「っ諒…どうして…」
「麻依、おまたせ」
いつもの優しい笑顔。
「君は…今日の司会の?」
「はい、施行担当及びソレイユの支配人をしております、佐伯 諒といいます」
そう言うと、私の隣に座った。
「俺が麻依の婚約者です」
「そう…でしたか」
「あなたのことは麻依から聞いてます。麻依はあなたの仕打ちのせいでずっと恋愛できなかったんですよ、トラウマになって」
「えっ…」
「…俺も訳あって恋愛に踏み込めない人生を過ごしてきたんですけど、そんな俺とトラウマを引き摺ってた麻依が出逢って、惹かれあって、恋におちて…結婚します」
「麻依…トラウマって…」
「いえ…私が勝手にそう思い込んでただけで…」
「…ごめん…本当にごめん…人生を狂わせるほどそこまで傷つけてたなんて…」
「確かに麻依は傷ついてました。でももう大丈夫です。俺がいるから、な」
諒が隣で私を見てくれてる。
それだけで強くなれる。
「うん」
笑顔を諒に返した。
そして隼人さんに…私の気持ちを話すと決めた。
「隼人さん…私は隼人さんの言葉が本当だと思って…浮気されたことも、私を否定されたことも悲しかった。その後も…また自分を否定されるんじゃないかって、新たな恋愛に踏み出せなかった。…でも諒に出逢って、自然と惹かれて…好きになって…諒じゃなきゃダメなくらい愛することができたの」
そう言って諒を見たら「俺もおんなじ」って笑ってくれた。
「だから、私は自分を取り戻して、愛する人を見つけられたから大丈夫です」
しっかりと隼人さんの目を見て、笑顔で言い切った。
「…そっか、麻依は出逢うべき人と出逢ったんだね。それが俺じゃなかったのが残念だけど、本当によかったと思うよ。結婚、おめでとう。二人で幸せになるんだよ」
そう祝福の言葉を残して、隼人さんはロビーを出ていった。
ドクッドクッ…と心臓の音が体に響く。
「……あ、今お持ちしますので…こちらに掛けてお待ちいただけますか」
何とか言葉を振り絞り、フロントに戻った。
隼人さん…
私のトラウマを作った人…と…
まさか職場(ここ)で会うなんて…
あっ、そんなことより、諒に持ち主が現れたって言わなきゃ。
…内線でいっか。
『はい、佐伯です』
「フロント、羽倉です。諒、さっきの落とし物の持ち主の方がお見えになったから、こっちでお返ししておくね」
『…麻依?どうした?…何かあったか?』
「…っえ?何で?」
『何か声がおかしい』
「っ…そんなこと…」
『すぐ行くから待ってて』ガチャ
え…声…?
おかしいってなに…?
すると諒が駆けてきてくれた。
「麻依、どうした?大丈夫か?何があった?」
「え…いや、何も…ていうか、忘れ物の持ち主の人が……その…トラウマの人だった…んだけど、大丈夫!」
「それなら俺が出るよ」
「ん、諒の顔見たら勇気が出てきたから、大丈夫」
「そうか…?もし辛くなったらすぐに呼べよ、ここにいるから」
「ありがとう…すごく心強いよ」
「ん…」
おでこにちゅってして、私を送り出してくれた。
「遅くなってすみません、こちらでお間違いないですか?」
「あぁ、コレだ!ありがとう」
「いえ、こちらこそすぐに見つけられずにすみませんでした」
「…麻依は相変わらず綺麗だな…いや、もっと素敵になったよ」
「!……いえ…」
あの頃よりも落ち着いた、優しい表情で話す隼人さんに…どういう顔で応対したらいいいのか…わからない…
「麻依……あの時は傷つけてごめん。ずっと…本当に申し訳なく思ってた」
え…?
なに…?
「俺…麻依に頼ってほしかったんだ。麻依に甘えてほしかった」
「……」
「勝手な言い分なのはわかってる。あの頃…ちょうど仕事も波にのってて金もそこそこあって…そこに若さも相まって怖いものナシの天狗になってた時期だった。だから、麻依になんでもしてあげたかったし何でも買ってやりたかった。結婚したら俺が養って、仕事も辞めさせてあげるとか思ってた」
「……」
「でも麻依はいつでも真面目でまっすぐで…俺の面倒さえみてくれようとした。…俺はそんな麻依が眩しかった。俺に頼らなくても一人で輝ける麻依が俺より上に見えた。…それが悔しいっていうか虚しいっていうか…一緒にいたら俺の方が頼りそうだった、甘えそうだった」
「……」
「…今でこそ、素直に甘えればいいのにって思えるけど、あの頃の俺はそうじゃなかった。何でも俺を頼りにしてほしかった…それこそが男の役割だと思ってた…。だから…頼りにされない事が…心配されることが情けなくて…浮気したって嘘までついて…麻依を遠ざけた…」
「浮気が…嘘?」
「あぁ…あれは嘘なんだ…。浮気なんてしてない。馬鹿な見栄さ。…ずっと麻依しか見えてなかったから、浮気なんてできやしないんだ」
「そう、なんだ…」
「麻依に言ったことも…全部俺の僻みだった……あれから年を重ねる毎に麻依にしたことの重さが積もっていって苦しかった…でも麻依にそれだけのことをしたんだからな…」
「………」
なんて言葉を返したらいいんだろう…
まだ何も考えられない…
「麻依は…結婚してるの?」
「えっと…今年の6月にします」
「…そっか、おめでとう。麻依に愛せる人がいるのなら安心した」
「隼人さんは…」
「俺はまだ。あ、この数珠は甥っ子のなんだ。前の法事の時から俺のバッグに入ってたんだけど、今日何かの拍子に落としたみたいでね」
「そうですか…」
「正直に話すとね、まだ麻依が独身だったら、謝って許して貰えるなら…もう一度やり直したいと思ってた、ずっと。でも結婚するんだもんな、もう諦めるよ」
「……」
「どんな人?旦那になる彼氏は。優しい人なんだろうなぁ、きっと」
「えぇ、優しくしてますよ」
上から愛しい人の声が聞こえたと思ったら、私の肩に大きな手の温もりを感じた。
「っ諒…どうして…」
「麻依、おまたせ」
いつもの優しい笑顔。
「君は…今日の司会の?」
「はい、施行担当及びソレイユの支配人をしております、佐伯 諒といいます」
そう言うと、私の隣に座った。
「俺が麻依の婚約者です」
「そう…でしたか」
「あなたのことは麻依から聞いてます。麻依はあなたの仕打ちのせいでずっと恋愛できなかったんですよ、トラウマになって」
「えっ…」
「…俺も訳あって恋愛に踏み込めない人生を過ごしてきたんですけど、そんな俺とトラウマを引き摺ってた麻依が出逢って、惹かれあって、恋におちて…結婚します」
「麻依…トラウマって…」
「いえ…私が勝手にそう思い込んでただけで…」
「…ごめん…本当にごめん…人生を狂わせるほどそこまで傷つけてたなんて…」
「確かに麻依は傷ついてました。でももう大丈夫です。俺がいるから、な」
諒が隣で私を見てくれてる。
それだけで強くなれる。
「うん」
笑顔を諒に返した。
そして隼人さんに…私の気持ちを話すと決めた。
「隼人さん…私は隼人さんの言葉が本当だと思って…浮気されたことも、私を否定されたことも悲しかった。その後も…また自分を否定されるんじゃないかって、新たな恋愛に踏み出せなかった。…でも諒に出逢って、自然と惹かれて…好きになって…諒じゃなきゃダメなくらい愛することができたの」
そう言って諒を見たら「俺もおんなじ」って笑ってくれた。
「だから、私は自分を取り戻して、愛する人を見つけられたから大丈夫です」
しっかりと隼人さんの目を見て、笑顔で言い切った。
「…そっか、麻依は出逢うべき人と出逢ったんだね。それが俺じゃなかったのが残念だけど、本当によかったと思うよ。結婚、おめでとう。二人で幸せになるんだよ」
そう祝福の言葉を残して、隼人さんはロビーを出ていった。