太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
…家について早々、諒がベッドにあぐらをかいて座ったと思ったら、その上に対面で座らされて、抱きしめられた。
そして、
「俺、カッコよかったの?」
「ドキドキしたの?」
「俺にキスされて嬉しかったの?」
等々、質問責めにされたけど…全部素直に答えた。
…きっと諒は不安なんだ。
過去を知らない、不安。
だから少しでも払拭してあげたくて、諒を大好きな気持ちをこれでもかとぶつけた。
少しして抱きしめる力が緩くなると、ちゅっと軽くキスされた。
「麻依は俺の過去、知りたい?」
「ん…学生時代の話とかは聞きたいけど、彼女の話とかは知りたいような知りたくないような…」
「前にも言ってたよね。元カノの話は聞けないって」
「うん…」
「ね、聞いてくれる?元カノの話」
「…聞いてほしいなら…」
胸がぎゅうって痛くて…
鼓動が早くて苦しくなる。
「ふ、そんな悲しい顔しないで?あと…これ聞いても、俺のこと嫌いにならないで?お願いだから」
「え、そんなひどい話なの?」
「んー、ひどくはないと思うけど」
「わかった…」
それほどまでして言いたいのなら…と、覚悟を決めた。
「俺さ、初めて付き合ったのって大学4年の時で、同級生の女の子から付き合って、って言われて付き合ったんだ。でも俺は好きとかじゃなくて、言われたから付き合った、ってだけだったから、最終的にはその人に『私のこと好きじゃないの!?』って言われて『うん、まぁ』って言ったら『じゃあ、別れる!』ってフラれたんだよね」
…は?
「え。それ言っちゃったんだ。ていうか…そもそもどうして付き合ったの?」
「あー、大学の男友達がとりあえず付き合ってみろって言うから。あぁそれが興信所のヤツね」
「…そ、そうなんだ…」
「ちなみに付き合った期間は約1か月で、その内2人で会ったのは7回くらい」
「そうなんだ…」
「次に付き合ったのは社会人になってから。前の会社の時ね。確か2歳上の人だったけど、やっぱ同じ感じで付き合って同じ感じでフラれた。まぁ好きじゃなかったからね。ちなみにこっちは付き合った期間は2か月くらいで2人で会ったのは5回くらいかな。でもどっちもフラれて悲しいとか悔しいとかもなかったよ」
「そうなんだ…どっちの人も長くないんだね。でも…」
「ん?」
「その…体の関係って…まぁそれなりに大人だし、会う回数とか関係ないんだろうけど…」
気になるけど聞きたくないような…
しどろもどろ。
「あー……あのさ、聞いても嫌いにならないでくれる?」
諒が頭をかいて言いにくそうにしてる…
何だろう…聞くのがちょっとこわんだけど…
「ん、嫌いにならないから言って?」
もう一度覚悟を決めた。
「俺……全部、麻依が初めてだから」
「…はい?」
今、なんと…?
「俺は、キスも、セックスも、全部、麻依が、初めての人、だから」
一つ一つ区切って分かりやすく言う…けど…
え? それって…
「え、えぇぇ!? うっ嘘だぁ!」
うそだうそだ。
絶対うそだ。
そんな筈ない。
そんな訳ない。
「ほんと。マジでほんと。麻依を抱くまで童貞だったからね」
あーぁ言っちゃった、って苦笑いしてるけどさ…
「嘘だよ…信じられないんだけど…」
「なんで?」
「だってあんな…海の時のキスだって…初めての時の…その…えっちも…スマートで…慣れた感じで…」
「そう見えた?」
「うん、絶対絶っ対!あれが初めてだなんて思えないって!」
「よかった…あ、嫌いになってない…?」
「うん、嫌いになんてならないけど。え、なんで嫌われると思ったの?」
「だって…28にもなってキスすら未経験の童貞の男だったんだよ?男のクセに経験がなくてテクもなくてヘタなのはさすがにイヤでしょ」
諒が苦笑いで私を見る。
〝私が諒の初めての女〞
っていう嬉しさが、じわじわと胸に拡がってきた。
〝私が諒の初めての女〞
初めての女であることに嬉しさを感じる自分にも驚いてるけど。
〝私が諒の初めての女〞
「諒…どうしよう…すごく嬉しいよぉ…」
「え?何が嬉しいの?」
「私が…諒の初めてなのが」
あっそうか…
私が…口でしてあげた時に『諒が初めて』って言ったら喜んでくれてたのを思い出した。
「麻依は嬉しいの?」
「ん…嬉しい……それに、ほかの人と比べられたら自信ないから」
「ふ…初めてじゃなかったとしても比べないよ。麻依しか見えてないんだから。てか麻依こそ元カレと比べちゃわない?」
「全然…思い出しもしないっていうか…あ、そうだね。私も諒しか見えてないや」
「よかった…。俺さ、ほんとに麻依が何もかも初めての女だから。恋心もカラダも。だから麻依は俺の人生唯一の特別な女なんだよ」
「ふふっ、すごいね」
「すごいよ?だから絶対離さないから」
「うん。あ…でも、私しか知らないと…他の女の人の体とか興味が出てこない…?」
「何でこんなに最高な女がいるのに、わざわざどうでもいい他の女の体に興味を持つ必要が?」
「ほら、よく言うじゃない、ステーキばかり食べてるとたまにお茶漬けが食べたくなるとかって…」
「あぁ…それで言えば、俺にとっては麻依が唯一の食材で、他のは食べ物ですらないって感じかな」
「ふふっ…ほんとに諒は私を喜ばせる天才だね」
「喜ばせようとしてるんじゃないよ、俺の正直な気持ちなだけだから」
「ん…ありがとう。愛してる」
私から唇を挟んで優しくキスをした。
「それは…いいってこと?」
諒が色気を含んだ目でニヤリと問う。
「…わかってるんでしょ?」
私も抱かれたいと思う気持ちを目にのせて答える。
「麻依が魔性の女になった……クッ、たまんねぇ」
「ふふ、何それ」
「これからたくさん〝俺達の初めて〞を増やしていこうな」
「うん、そうだね」
「じゃあまずは…着衣のままするってのは?」
「う……いいけど…」
「ハハッいいんだ、じゃあ遠慮なく」
「え?冗談だったの?」
「いや、マジだったけどさ、麻依がイヤがるかな?って思ってたから。俺はどんな麻依も大好きだし、いつだって愛してるよ」
って諒がぎゅうっと抱きしめてくれるから…
「私もだよ」って抱きしめ返すと、そこから2人の甘い時間が始まった。