太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
「諒…」


声をあげたのは私ではなく福田くん。

「お前ら…ただもんの絆じゃねぇなぁとは思ってたけど…そんなすげぇ縁があったんだな……つか母ちゃんが2人いるっていいな!」

「智さん…」
「福田くん…」

「だからなんで麻依はまだ『福田くん』なんだよ、諒みたく名前で呼べよ、同期で同僚なんだからよー」

「あぁごめん、うっかりうっかり」
いつもの調子でペチとおでこをはたいた。

「もう、そんな麻依なんかプンだ。諒にベタベタしてやるぅ」

「やめてください智さん。ベタベタは麻依がいいです」

「う、2人とも容赦ねぇな…」

「いつものことじゃないっスか、智さん。ははは」

そんな福田くんとのやり取りで、会場の雰囲気が一気に明るくなった。
やっぱりすごいな…福田くん。


「それでは次にご紹介しますのは、麻依さんのおばあ様とおじさん、いとこの4名様です」
修さんが言うと、今度はモニターにおばあちゃん達が映し出された。

『麻依~、おめでとう!おばあちゃん達も式の様子を見ていたよ。ほんとに綺麗になって…おばあちゃん嬉しいよ…諒さん、麻依をよろしくお願いしますね』

おばあちゃんが目に涙を浮かべてお祝いの言葉をかけてくれると、諒が「はい、大事にします」と答えてくれた。

『麻依、結婚おめでとう!だんだんと智世に似てきたなぁ!ははははは!諒くん、麻依はおてんばだから目を離さないでくれよ~?あ、私は麻依の母親の兄の羽倉俊介です。よろしく』
おじさんは明るく自己紹介したけど、名前…
まぁ知る人はいないだろうし、いっか。

『麻依~、おめでとう!麻依の事だからきっとドレス姿も綺麗だと思ってたけど、予想以上だったよ!諒さんに、麻依はモテるから気をつけてね、って言おうと思ってたのに、諒さんの方がモテそうだから、麻依はしっかり捕まえてろよ!麻依のいとこの羽倉恭也(きょうや)でした』

『麻依姉ちゃん、結婚おめでとう!恭也の弟の幹斗(みきと)です。あー、俺が麻依姉ちゃんと結婚したかったんだけどなー。でも諒さんカッコいいし超お似合い!俺、諒さんにも憧れちゃうなー。今度2人で遊びにきてね!』
恭也くんと幹斗くんも明るく祝福してくれた。
そんなやり取りをみんなが和やかに見てくれてる。

ふふ、この人達が、羽倉ホールディングスの会長、社長、本社部長、課長だって知られたら大変だもんね。

親戚からのほのぼのとしたお祝いメッセージとして終わろうとした時。

「…は、羽倉社長!と俊介くん!」
声をあげたのは富山さん。
え?まさかの…知り合い?

『あら?…富山くん?お久しぶりねぇ…あら、麻依達と知り合いなの?』

うわぁ!まさか、おばあちゃんとおじさんを知る人がいたとは!

「はい、諒くんと麻依さんのお勤め先のホールで社葬を…それより、麻依さんは社長のお孫さんで!?」

『えぇ、そうよ?私に似ず美人でしょう?ふふふ』

「専務、お知り合いでしたか?」
ナナが富山さんに聞いた。

「あぁ、私がライト建設に入る前にいた職場の社長をしてらした方で、だいぶお世話になったんだ」

「そうでしたか!すごい偶然ですね!あら、確か専務の前職って、羽倉紡績さんじゃ…」
「あぁ、今は羽倉ホールディングスになっているがね」
「え!じゃあ…マイのおばあ様が、羽倉ホールディングスの社長さん!?」
「あっと、今は会長でしたね、失礼しました。俊介くんが社長になられたとお聞きしましたが」

「ふふふ、そうよー。あのひよっこ俊介が社長なのよぉ、富山くんがしごいてくれたお陰ねぇ」

「いえいえ…」

そんな会話が続くと、お母さんが間に入った。
「ちょっとお母さんに兄さん、皆さんが引いちゃってるわよ?」

『あぁ、それは申し訳なかったね…。諒さん、麻依もごめんよ。富山くん、これも何かの縁だし、今度ゆっくりお話しましょう』

「はい、ぜひとも。皆さんもすみませんでした」
富山さんが四方八方に頭を下げる。

「なぁ麻依…全然そんなお嬢には見えねえんだけど…」
「智さんッ、何てこと言うんですか!麻依先輩のお母様も社長さんなんですよッ!お嬢様ですッ!」

「いや、ひよりん…私はお嬢様として生活したことないし…貧乏性だし…」

「ふふふっ、じゃあついでに自己紹介しちゃいましょうか。私が麻依の母で、小さなデザイン事務所をやってる羽倉智世です。ふふっ、麻依と似てるでしょ?」

「わっ、すげぇ似てる!つか、いい遺伝子貰いすぎな!俺も欲しいぜ」
「何言ってんスか、智さん。貰えるわけないでしょ」

「おい、智と翔琉、次に行っていいか?」
修さんが声をかけた。

「あっ、修さんに叱られたじゃねーか。はーい、どうぞー」

「はぁ…緊張感のない奴らですみません」

修さんがため息混じりに言うと笑いが起こった。

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