太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
「皆さま、宴もたけなわではございますが、楽しいお時間もそろそろとなってまいりました。どうぞお席の方へお戻りいただきます様お願いいたします」
オーサ姿からまた元の司会の姿に戻った修さんが声をかけると、皆さんが席に戻られた。
「それでは、諒くんと麻依さんから皆さまへご挨拶があります」
皆さんの前に立つ私達に、修さんがマイクを差し出し、それを諒が受け取って話し始めた。
「皆さま、本日は私達のためにお集まりいただきまして、本当にありがとうございました」
2人で一礼すると、諒がふぅ、と息を吐いて…話し出した。
「最初にお話しした様に、俺には2人の母親がいます。……俺は…ずっと捨てられたものと思ってきたせいで、長い間、誰かに頼ったり、誰かを深く信頼することができませんでした。裏切られるのが怖かったんです。それは女性に対しても同じでした。俺はこのまま一人で生きていくんだろうと思っていたところに、麻依との出逢いがありました。俺は…自分でもわからない内に麻依に惚れてました。そして、麻依を好きな気持ちに気付くと同時に、職場の…ソレイユのみんなを信頼している事にも気付きました。……そして昨年、日野の母と再開して…動揺し葛藤する俺を、理解して、支えて、進むべき道を示してくれたのも麻依でした。麻依のおかげで、俺を手放したのが当時の母の精一杯の愛だった事が理解できて、今は母に感謝しています。…俺にとって麻依は、俺を、そして俺の人生を変えてくれた大事な人であり、俺が唯一愛する女性です。俺は、麻依を一生大事に、愛し続けます」
諒が私に「話せる?」って優しく聞いてきたから、涙ながらに「うんっ」て答えてマイクを持った。
「皆さま、今日は私達のために、本当にありがとうございました」
ちょっと鼻声だ、鼻をすすりながらになりそうだな。
「…今、諒から、私がすごい人みたいに言われましたけど…エヘヘ…全然そんなことはなくて……逆に、私にとっては、諒が私の人生を変えてくれた人なんです」
マイクを離してズズッと鼻をすする。
「正直に話しますと…私は…ちょっと誰かを好きになることが怖くなっていて…何年も恋愛感情を封印していました。だから、私もこのまま一人で生きていくんだろうな、って思ってたんです。おひとり様もいいかなって。でも、諒に出逢って…私も気付いたら好きになっていました。といっても、ずっと恋愛感情から離れていたので、最初は自分でもよくわからなかったのですが、諒に気持ちをぶつけてもらって、私も自分の気持ちに気付いたんです。私…諒と出逢ってから、人生に華やかな色がついたみたいに楽しくて幸せで。こんな私の人生を変えてくれた諒を心から愛していますし、一生、諒の隣で生きていきたいと思っています」
エヘッて笑って諒を見たら、諒も涙目で笑顔を向けてくれた。
マイクを諒に渡すと、反対の手を私の腰に優しく添えた。
「俺達は出逢ってからまだ1年と少し、交際を始めてからは1年も経っていません。人生も恋愛も不器用で、大人としてもまだまだ未熟な2人ですが、お互いを大事に思いながら、何事も一緒に楽しみ、一緒に乗り越え、俺達らしいあたたかい幸せな家庭を築いていきたいと思っています。どうか今後もお付き合いの程、よろしくお願いいたします」
最後に2人で一礼すると、会場は大きな拍手に包まれた。
「諒ぉぉぉ、麻依ぃぃぃ…オレ感動したよぉ~~やっぱお前らすげぇよぉぉ~~」
福田くんが人目も憚らずに泣いている。
その隣で「はいぃぃ…感動ですぅぅ…」って涙ながらに言うひよりんを、翔琉くんがイイコイイコしてる。
次はこの2人の番かな?ふふっ
「諒ぉ~今日泊まりに行くからなぁ~」
「嫌ですよ!何で新婚家庭に来るんですか!」
「ただのオジャマ虫っスよ、智さん」
「麻依ぃ~いいよなぁ~?」
今度は私に振ってきた…
「え、何で来るの?何しに来るの?前だっていきなり来て飲んで酔っ払って泊まってくし」
「何?智、お前そんなことしてたのか?」
「だって修さーん、俺、こいつら大好きなんですもーん」
「そっかそっか、じゃあとりあえず先に新郎新婦退場だけ先にさせてくれるか?」
「うぅ…オッケーっす修さん…後で続きしますから」
「お、おぉ、続きやるのか……コホン。それでは新郎新婦の退場となりますが、このあと、挙式会場のガーデンにて全員で写真撮影いたしますので、皆さまはお荷物をお持ちになりガーデンへとお進みください。
尚、全員での撮影後に、それぞれご自由にお写真をお撮りいただけますので、お時間の許す限りお楽しみください。……それでは、新郎新婦、退場です。皆さま、温かい拍手を!」
私達は皆さんの大きな拍手の中、披露宴会場を後にした。