太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
JNテレビのコーナー出演から3か月経った12月――
街中がクリスマス色に染まる頃、千紗さんが俺達の家に、おばさん特製手作りマカロンととんでもない話を携えてやって来た。
「それで、すごい話ってなーに?」
麻依が千紗さんに紅茶を出していると、千紗さんが「フッフッフ…」と意味ありげに笑う。
「なんと!【バズっしょ】から出演依頼が来ましたー!」
「え、それって『日本全国津々浦々、バズったモノを徹底調査!』っていう、あの有名な番組だよね、すごいじゃない!」
「あぁ、【バズっちゃってどうしましょ】だっけ」
「そうよー、それそれ。でね、諒くんと麻依にも来てるんだ、出演依頼」
「えぇっ!?」
「千紗、どういうこと?」
「あのね、【バズっしょ】の制作スタッフが結婚式場のテーマで探ってたら、ブライダル情報誌のネットアンケートで、ウチが『気になる式場』で急上昇で上がってたらしくてさ」
「すごいじゃない!全国でしょ?」
「そう。でね、その理由が〝CM〞だったのよ」
「CM?」
「諒くんと麻依のCMが大好評で、反響が大きくてさ!ホラ、見てみてよ理由」
と千紗さんが俺達に一枚の紙を見せてくれた。
パソコンの画面を印刷した感じのそれには、
『美男美女!』
『見てて幸せになる』
『モデル同士に見えないくらいラブラブ』
『本当の夫婦?それともモデル?気になる!』等の言葉が並んでいた。
「話題が話題を呼ぶってこの事なのねー。誰かがネットにアップすると、またそれを見た誰かが話題にして、どんどん拡散されてるみたいでさ」
「「へぇ…」」
「でも番組スタッフからオファーの電話が来た時はビックリしたわよ。冗談かと思ったけど、JNのあのコーナーもチェックされててさ。ほら、JNって【バズっしょ】のMテレ系列だし」
「「へぇ…」」
「まぁ確かにウチもホームページに上げてるCM動画の閲覧数が爆上がりだし『CMを見て来た』って県外のお客様も増えてきてるんだけどね」
「「へぇ…」」
「そ・れ・で!バズってる式場とそのCMってことで、ウチの式場と二人に声がかかったのよ」
「「へぇ…」」
もう「へぇ…」としか返せないほど信じられない話だが、全国放送か…
それこそ全国の男に麻依は俺のだと知らしめる絶好のチャンスではある。
が…麻依は安定期に入ったとはいえお腹も少し目立ってきたしな…
「麻依はどう思う?」
「私はどちらでも。諒は?」
「んー…出たいとは思うけど、俺は麻依の身体が心配だな。収録って東京だろ?」
「そうだよね…麻依、今6か月だっけ。収録は来月辺りになると思うけど」
「うん。今のところは赤ちゃんも順調だし、私の体調もいいから大丈夫だと思うよ。あ、そうだ。あさって健診に行くから、その時に先生に聞いてみよっか。OKが出たら出演の方向で」
「麻依…いいのか?」
「うん。諒は出たいでしょ?」
「ん…まぁね、せっかくだし。でも麻依の身体とこの子が一番大事だから無理してまでは出なくていいよ」
と麻依のお腹に手を当てる。
ナデナデ。元気に大きくなれよ。
「ありがと。ふふっ、諒はほんとにいい旦那様だし、いいパパだよね」
「まーいー…ありがと、愛してる」ぎゅう
「それならあたしも連絡くれた番組担当者に麻依が妊婦ってこと話してみるわ。向こうもそこまで考えてなかっただろうし。それで双方OKなら出演するってことでいいかな?」
「ありがと。じゃあそうしよっか」
「了解!大丈夫だとしても、先生に注意する事とか聞いといてね。私も充分配慮するから!」
「あはっ、ありがと千紗」
…そして後日、医者とテレビ局双方ともOKが出たので、俺達は全国放送の【バズっしょ】に出演することになったんだ。