太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
「……奥さん…綺麗な人ね」
「…えぇ」
「でも…一般人よね。諒クンほど素敵な人には、芸能界でも持て囃されるアタシみたいなイイ女の方が似合うわ。諒クンも有名人の妻を持ったら鼻が高いでしょう?」
ハッ、まさに〝馬鹿も休み休み言え〞だな。
「麻依が綺麗なのは外見だけじゃないんですよ。麻依は、心も外見も世界イチ綺麗で可愛くて素晴らしい女性です。…いや、世界イチとか誰かと比べられるもんじゃないな……俺が唯一惚れた女ですからね。逆に俺にはもったいない、最高のイイ女なんですよ、麻依は」
てか、とにかくすげぇ可愛いんだ。
ふ…麻依を思い描いただけで顔が緩んじゃうな。
そんな俺が面白くないのか、腹黒さが覗く顔でニヤリと笑った。
「……そう……じゃあその大事な奥さんを悲しませてもいいの?…夫が犯罪者だなんて雑誌に載ったら肩身が狭くてどこにも居られなくなるわよ?…あ、もしかしたら奥さんの方から別れたいと言うかも知れないわね。…そしたらアタシが諒クンを拾って、記事の火消しもしてあげるわ、フフ」
ふー……
戻る前に少し冷静にならないとな…と呼吸を整えた時に、ふと麻依の声で、ある言葉が頭をよぎった。
〝その先輩、何を考えてたんだろうね…ちょっと聞いてみたいよね〞
…そうだ、佐々木さん…
麻依、ありがと!やっぱ麻依は神だよ!
俺は一縷の望みも捨てねぇからな!
「すいません、今って佐々木さんと連絡はつくんですか?」
「…佐々木くん?えぇ、よく連絡が来るし、たまにだけど会うわよ。彼、去年からフリーの仕事を始めて東京に住んでるから」
「そうですか。…あの、明日って佐々木さんも呼べますか?」
「佐々木くんを?」
「当時をよく知る関係者として聞きたいこともあるので、同席して頂きたいのですが」
「…わかったわ、聞いてみるわね」
…この件のカギは佐々木さんにあると俺は睨んだ。
それを察したのかはわからないが、月乃さんが素直に応じてくれた。
あぁ、月乃さんは佐々木さんが味方になると踏んだのかもな。
「すみませんが、今話した件は伝えずに来てもらいたいのですが。俺がいることも内緒で」
「…えぇ、わかったわ。それならSNSで簡単に伝えた方がいいわね」
月乃さんがスマホで佐々木さんとやり取りしている間、俺はウーロン茶を飲みながら事の重大さを感じ始めていた。
ゴシップ誌の記事か…
載ってしまったら影響はでかいよな…
はぁ…
…現在、全くと言っていいほど勝機のない状況にため息しか出ないが、本当に俺は何も言っていない。
ただ、それをどう証明するかが問題で…
「諒クン、明日佐々木くんも来ることになったわ。見てもいいわよ」
とスマホの画面を俺に向けてくれた。
確かに月乃さんはこの件に関しては触れておらず、佐々木さんはデートに誘われたと思っているようだった。
「ありがとうございます。…ではまた明日に。失礼します」
もう口を開くのも億劫な程の疲労を覚えた俺は、自分の分だけ支払い、店を後にした。