太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
すると、諒が「あ!そういえばさ」と、何かを思い出したように話し出した。
「今日テレビ局内で珍しい人に会ったんだよ」
「…テレビ局で?」
「うん。一人で廊下を歩いてた時に声を掛けられたんだけど、その人が、あの…大学の時に付き合ったって人でさ…」
「へっ!?」
月乃さんの次は大学の時の元カノ!?
…何て偶然の重なり…
「…そうなんだ……うん…」
しゅうぅぅ…って一気にふわふわ心地がしぼんじゃった。
「あぁっ、麻依ごめん!そーゆーのじゃないから!ってかそっちも付き合ってないようなもんだったし!」
「ん……それで?」
「その人、守岡(もりおか)さんていうんだけど、何でか俺達が今日番組の収録に来るの知ってたんだよ。俺達のCMの事も」
「知ってた、って…」
テレビ局の関係者なの?
それで…諒のことがまだ好きだから声を掛けた…ってこと…?
プスリ、と胸にトゲが刺さる。
ん…チクチク…
「それでさ、なんと守岡さん、麻依のファンなんだって!」
「あぁ…私のファン…………へ?…私のファン?…て…ど、どういうこと?」
「時間もなかったし詳しくは聞いてないけど、守岡さんの職場の後輩の女の子が麻依の大学の後輩で、その子から麻依がミスキャン三連覇した事とか麻依の人となりを聞いて、麻依のファンになったらしいんだよ」
「へ…へぇ……」
何だかよくわからない展開になってきた…
「それ聞いてさ、麻依の良さをわかってくれる人がいるのがすげぇ嬉しくてさ。守岡さんにも毎日麻依と一緒にいるのを羨ましがられて、ちょっと惚気て自慢しちゃった、ハハハ。あ、守岡さんもラブラブな彼氏がいるって言ってたから、その辺の心配はいらないからね」
「そうなんだ…」
あれ、胸に刺さってたトゲがプッと弾かれる様に飛んでっちゃった。
ふふ、単純だなぁ、私。
すると、諒がベッドから下りて、鞄の中から何かを取り出した。紙…?
「それでさ、麻依とお近づきになりたいとかで、これを麻依に渡してくれって頼まれたんだ。ハイ」
と、諒から手渡されたそれは可愛らしい花柄の封筒で、表には〝佐伯 麻依 様〞って丁寧な字で書いてあった。
裏を見ると大きめのシールでしっかり封がされてあり、下の方には〝守岡 実玖〞と名前があった。
「ほんとに私?諒に気があるんじゃなくて?」
「うん、あの様子じゃ俺ってことは全くないよ。マジで麻依との橋渡しに使われただけっぽい、ははは。本当は後から俺達の控室に来て、麻依に直接会って渡したかったらしいんだけど、守岡さんも急な仕事で終わる時間が読めないとかで、今行こうかどうしようかと迷ってたら俺を見かけて、これは手紙を渡しとくチャンス!って思ったらしいよ」
「そうなんだ…」
封筒の差出人の名前をもう一度見る。
「もりおか みく、さんていうの?」
森岡でも盛岡でもないんだ……珍しいかも…
「そうみたい。俺、顔も名前も全然覚えてなくてさ。守岡さんに名乗られて、何となく〝あー、そうだったかも〞みたいな。ハハ……何か俺ってことごとく失礼だよな…」
守岡実玖…さんかぁ……どんな人なんだろ…
ん?…守岡実玖…もりおか…みく……
あれ、この名前…確か…
「あー!」
「まっ麻依、どうした?」
「え、諒、みきゅるんのこと知らないって言ったよね?」
「うん。知らないけど」
そこで、スススス…と急いでスマホで検索し、ババン!と画面を諒に見せた。
「守岡さんて、この人だよね?」
「あ、そんな感じだったかな。あれ…何で?守岡さんて何かで有名なの?」
やっぱり!
「あっあのね、守岡さんがみきゅるんなの!今すごーくすごーく人気のあるモデル…ていうかマルチタレントなの!」
「へー、そうなんだ、知らなかったな……あぁ、だから仕事でテレビ局にいたのか」
なんて、元カノが今や大人気の有名人だというすごい事実を聞いても尚、いつも通りの諒にホッとした。