太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
ホテルを出て隣のビルに行くと、階段の入口にその看板はあった。

2階の〝喫茶ルーリー〞…ここか。
昔ながらの喫茶店みたいな木製のドアを押すと、思ったよりも広い店内にはお客がちらほら。

壁側からさりげなく目を移していくと、スーツ姿のおじさん2人に、上品そうなおばさんグループ、窓際にはホストっぽい男三人と一人の女のグループ……
平日の午前だけど、東京はいろんな人がいるな。

でも月乃さんの姿は見えず、なら適当に座って待つか…と思った所で「あっ、諒クン、こっちよ」と月乃さんの声がした。

声のする方を見ると、入口からは見えづらい奥にいた様で、観葉植物の陰から月乃さんが顔を出していた。


あぁ、個室があるって言ってたな…

そちらに向かうと、ドアはなく密室にはならないものの、店内の席からはほぼ見えないという、半個室の様だった。

そしてそこには月乃さんの他に見知らぬ男性が一人。

「…そちらの方は」

「昨日話したゴシップ誌の記者よ。結果次第ではすぐに伝えたかったし。それに、ネタの当事者を見ておいた方がいいと思ってね、フフ」

「どうも。久々にすごいネタだからね、楽しみだよ」
軽く手を上げるその男は修さんより年上に見えるが、まぁ見た目は悪くない男だった。


はぁ…

ってフツーにため息を出したら、俺の後ろにいる麻依にお尻をペシッて軽くはたかれちゃった。
こーゆうやり取りが夫婦っぽくて、なんかすげぇ嬉しいんだよな、俺。
こんな時だってのにニヤけちゃったもんだから、慌てて片手で口元を覆った。

「あら…奥さんも連れてきたの?」

「えぇ。何か不都合でも?」

「いえ…逆に、妊婦さんなのにショック受けたら大変なんじゃないかと思って心配で…クス」


「………」
今度はため息に見えない様にゆっくり息を吐き、月乃さん達と向かい合う形で、テーブルをはさんでソファに三人で座った。
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