太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
「佐々木さんはまだですか」

「えぇ。さっき連絡があって、電車のトラブルで遅れるそうよ」

「そうですか…」


…佐々木さんが来ないことには話が進められないしな…

この何とも言えない重い空気が嫌で、俺達は先に飲み物をオーダーした。


程なくしてテーブルに飲み物が置かれると、俺はターコイズブルーのコーヒーカップを眺めながら考えていた。


悪い方に考えたくはないが…
もし佐々木さんが月乃さんの味方についたら、マジでゴシップ誌に載るっぽいな…

俺が詐欺師とされないためには何が必要なんだろうか。
プロポーズらしき言葉を言っていないと証明するには何をしたらいいんだろうか…

コーヒーを冷ましがてら、そんなことを考えていると……


「諒クン、熱めのコーヒーお好きよね?どうぞ飲んで?……麻依さん、奥様なのにそんなことも言えないのかしら?」


…カチン

「俺、熱いのは好きではないです。麻依は俺が冷ましてるのを知ってるから早く飲めだなんて言わないんですよ。な、麻依」

「諒…」

「…あ…あら…好みが変わったのね…」

「いえ、以前から変わってません」

「…じゃああの頃は猫舌が恥ずかしくて無理してたのね」

「いえ。というかそれ…誰かとお間違いでは?」

「…ッ」
今度は月乃さんがムッとし、横を向いた。


…佐々木さんが来る前から争ってどーすんだ…と思いつつも、麻依を侮辱された事が腹立たしくて、売られた喧嘩をつい買ってしまった。

まぁ熱いのも飲めなくはないんだけど、少し冷ました方が好きなのは事実だし、それは麻依も知ってるからな。



「諒クン…ごめんなさい、ケンカはやめましょ。これから二人の生活が始まるのに、その最初がこれでは悲しいわ…」


「月乃さん、昨日も言いましたが、俺は麻依と別れません。一生麻依だけを愛し、麻依と添い遂げます。いくら待とうが、この気持ちは絶対に変わりませんから」


「…まだそんなことを……いいの?諒クンは結婚詐欺で訴えられるのよ?ゴシップ誌に載っちゃうのよ?…そんな事になったら麻依さんも今まで通りの生活なんてできないし、そちらの式場さんも大炎上しちゃうのよ?…お二人ももっと諒クンを説得した方がいいんじゃないかしら」

という言葉に、麻依がすかさず答えてくれた。

「月乃さん、私も諒と別れる気はありません。私は諒を信じています。あのプロポーズの言葉は諒ではありません」

「そうよ!諒くんはね、どうでもいい女にはしょっぱーーーい、冷たーーーい対応しかしないの!興味のない女に対して『迎えに行く』だなんて言葉が出てくるワケがないのよ!」

千紗さんもありがとうございます。
えっと、フォローだと思っておきます…



「ふぅん……でもねぇ…アタシは聞いてるんだもの。やっぱり結婚詐欺師として訴え……あら…どなたかしら?」

不意に月乃さんの視線が俺から離れ、作り笑顔を見せた。

え?

つられて俺もそちらを見ると、このスペースの入口にホストっぽい風貌の男が一人、立っていた。

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