太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
それからは彼女の独壇場だった。

というとやや語弊があるか。

俺は羽倉さんの対応能力の高さにとにかく驚いた。

性格が良ければいいという事ではないのだ。

何というか、クレームに対してはテクニックが必要なのだと思う。
それらを余すところなく使えた上で、元々の性格が相乗効果をもたらした…そんな風に見えた。

…すげぇな…

…ヤバい、俺、いつまで経っても羽倉さんに認めてもらえないかも…



羽倉さんの独壇場の途中で少し事務室に戻り、またフロントに戻ると、先ほどの男性が数珠を買っていた。

…ここで売ってる数珠って仏具店でもいいやつじゃなかったっけ?
それ買わせた?
…すごくないか?

内心驚きながらフロントに来ると、振り向いた羽倉さんに呼び止められた。

「あっ支配人、今日お通夜の山本様のお客様ですので、ご案内をお願いできますか」

そしてその男性に俺を紹介する。

「富山様、こちら山本様の担当をします佐伯です」

俺も挨拶し、富山様を2階へ案内している途中、話しかけられた。

「先程は支配人の方にコーヒーを持ってきて貰ったんですね」

「えぇ、実は」

あぁ、そういう事か…
さっき羽倉さんに呼び止められた時、普段の呼び名だったから気に止めていなかったけど、敢えて「支配人」て言ったのか。

…何その回転の速さ…

喪家控室前のロビーにゆったりと置いてあるソファに富山様を案内し、おもむろに話し出す。

「まだまだの若造でそんな器ではありませんが。…ここフューネラルホール ソレイユで支配人を勤めております佐伯と申します」

笑顔で丁寧に名刺を渡すと、男性は「いやいやそんなことは」と話し始めた。

「こちらには初めて来たんだが、素晴らしいところだね」

まず羽倉さんの対応について褒められた。

俺は彼女の対応能力に驚いたが、お客様に褒められるということはやはり素晴らしいのだと思う。

その後はホールについても色々とお褒めの言葉を頂いた。
これは社長に伝えよう。

富山様が俺に名刺を差し出した。
見ると、株式会社ライト建設の専務とある。
…結構な大企業じゃなかったか…?

「私はこのホールが気に入ったよ。建物もだが、特にあなた方が。もし葬儀に関することがあればこちらを頼りたい」

「…ありがとうございます、富山様。小さな疑問でも構いません。どうかお気軽にご連絡下さい」
笑顔で返すと、そこへ羽倉さんがやってきた。

「お話しのところすみません。支配人、山本様がご自宅を出発されました」

「わかりました、ありがとう。…富山様すみません、僕はこれで失礼いたします」

「お手間を取らせてすまなかったね」

僕は「いえ」と一言返し、一階へ向かった。
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