太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~

…そんな感動を思い出してたんだけど、智さんのコーヒーをすする音で我に返った。

…ズズッ、ズゥ…


「ふふっ、…みんな、ありがとう。私も出産と育児と頑張るので、フロントのフォロー、よろしくお願いしますね」

「俺達施行担当は一番間近でフロントに関わって仕事を見てきてるからね、他のホールのフロントより使えると思うよ。だから麻依さん、安心してママ業に専念してね。カナも久しぶりに赤ちゃん育児を手伝いたいって言ってるし、どんどん頼ってよ」

「ありがとうございます。ふふっ、ぜひお願いします」

「おぅよ、育児のフォローもするしさ、いつでも呼べよ!」ズズゥ…

「智さんからの育児のフォローは間に合ってます」

「いーじゃん、俺にもパパ役させろよー」

「だっダメです!絶対にさせませんからね!…アレでしょ、自分が本当のパパだよ~、とか言うつもりですよね…」

「やだなぁ諒きゅん、そんなこと言わないってぇ。…あっ、そいや諒、スーツ着たか?」ズッズズゥ…

「着ましたよ。…てか智さん、音は立てずに飲みましょうよ…」

「いーじゃん、好きに飲ませろよぉ」ズズゥ…


「そうだった。福田くん、ありがとう。シャツは洗濯したし、スーツはクリーニングに出したからきれいだよ」
と、麻依がロッカーから紙袋を出して智さんに渡した。

「クリーニングなんてよかったのに。諒の残り香と温もりが残ってる方が俺は嬉しいんだけど」

「うん、だからクリーニングに出しといたの」

…麻依…そこまで智さんの思考を読んでたのか……俺を取られたくないからとはいえ…それ、なんか妬くんだけど……ムゥ
だから今夜もねっとりと愛しちゃうからね。


「で、写真は?撮ったんだろ、見せてみろよ」

「撮ったけど…」
「ちょ、それはやめて!すげぇ恥ずかしいから!麻依、見せないでよ?」

「いーじゃん減るもんじゃなし、見せろよ」

「んー…すっごいカッコいいから…少しだけだよ?」
「えっ!? 麻依!? 見せるの!?」
「うん、少しだけね。カッコよすぎてこれ以上惚れられても困るし」

「おー、麻依さんのノロケがまた聞けた!」

「ふふ、ホントにカッコよかったんですよ。ほら」

うわぁ…と頭を抱える俺の隣で、麻依がスマホを皆の前に差し出した。

「……おぉ…諒……マジで俺とは全然違うな……すげぇかっけぇじゃん…」

「そっスね…こんな衣装まで似合うんスね」

「でも翔琉くんも似合いそうだよね。髪の毛を少し遊ばせたらほんとのホストに見えそうだよ」

「そっ、そうですね!翔琉さん!着てみましょ!」
「えっ!陽依…何言ってんの…」

「俺も着ていいか?実は智が全社忘年会でネタやった時に気になってたんだよ。ある意味コスだもんな、あれ」

「じゃあ着てみましょうよ!みんな背格好も似てるからサイズも合いそうだし、まだ休憩時間も充分あるし!」

「そうしましょ!さ、翔琉さん!」
「えぇ!? マジ今やんの!?」
「翔琉、俺も着るんだから早くしろよ」
「修さんまで…」
「じゃあ私、カナさん呼んでくる!」
「いや麻依さんは座ってて、カナは俺が呼んでくるから。翔琉、早くな」


なんて、昼休みの穏やかなコーヒータイムが、一気にホスト風コスプレ撮影会になっちゃった。ははは。
< 266 / 268 >

この作品をシェア

pagetop