太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
夜中、私がベッドの脇でうたた寝していると、支配人が動く気配がした。

目を覚まし、支配人を見るとうなされている…

どうしたんだろう…
熱が上がった…?

万が一の時のため、救急車の呼び方を頭の中で再考していると、支配人がうなされる様に言葉を発した。

「…行かないで……僕を……捨てないで…」

苦しそうな表情で手を伸ばしてきた。

行かないで?
僕を…捨てないで?

えっと…聞いてはいけなかった気がするけど…
この状況…どうしたらいいの…?

私の判断で…
私のしたいように行動してもいい?

聞くあてもなく問いかける。


そして私は…
弱々しく布団から出た手を優しく握って言葉をかけた。

「どこにも行かないよ、私がそばにいるよ」

それは同情とかその場しのぎの言葉ではなく。
私の素直な…想い…

「…だから安心しておやすみしてね…」

もう一方の手で支配人の頭を撫でながら、耳元で優しく話しかける。

言葉に安心して落ち着いたのか、意識が眠りに落ちたのかはわからないが、また穏やかな寝顔に戻り、寝息をたて始めた。

…大きな手…

握った手をまじまじと見る。
男らしく骨張っていて、それでいて長くてきれいな指…

…この手で触れられたい……

その手のひらを自分の頬に当てようとして、ハタと気付く。

ぎゃーーー!

さっきから何なの!?
私、病人に対して何やってるの!?
弱ってる人を襲おうとしてる!?
枯女じゃなくて痴女一歩手前!?

いやーーー!

…ちょっと待って、心の中で叫びすぎ…

少し冷静にならなきゃ。
と、冷蔵庫からアイスティーを出して飲む。

…ふぅぅ…
クールダウン完了。


あ、そういえば頭もすごい汗かいてたみたい…

ふと思い出して、水で濡らして固く絞ったタオルで顔と頭の汗を優しく拭う。
額に張り付いていた前髪を上げ、穏やかに寝息を立てる支配人が、いつもより幼く見えた。

…あれ、そういえば年下なんだよね。
しっかりしてるから、そんなのすっかり忘れてた。

あっ…でも誕生日が来たから今は同じ28歳か…

落ち着いて眠る支配人に安心したのもあって、ふ、と笑みがこぼれた。

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