太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
「なんか慣れてきたね」
諒くんがクッと笑う。

「もう、諒くん、悪ノリしすぎだってば」

「そうさせてるのは麻依さんだから。ねぇ、マイマイ?」

「だからぁ」

「俺のことはずっと〝りょおたん〞呼びでも構わないけど?」

「もぉ……あ、そうだ」

「ん?」

「えっと、名前呼びとかタメ口とか提案しちゃったけど、嫌じゃなかったかな…って気になってて」

「ふ、それ気にしてたの?〝りょおたん〞呼びまでしといて?」

「だからそれは」

「はは、ゴメンゴメン。俺は嬉しかったよ。みんなともっと親しくなれるしね」

「それならよかった…」
ホッと安堵してたら諒くんに優しい微笑みで返された。

キュン

ん?キュン?



「海、入らない?」

「え?」

「まだ一緒に入ってないでしょ」


そういえばまだひよりんとしか遊んでなかったなぁ…

と、ひよりんを目で探していたら、翔琉くんと海で遊んでるのが見えた。

あれ?…なんかラブラブじゃない?
てか、どっからどう見てもラブラブだよね、あれは。
たまに翔琉くんに、ぎゅうってされてるもんね。

あんなにすごい可愛いひよりん、初めて見たなぁ…よかったぁ。

ふふっと笑みがこぼれる。


「どうかした?」

横からの諒くんの声に我に返る。
「うん、ひよりんと翔琉くん、うまくいったみたいで嬉しくって」

「おっ…そうみたいだね。よかったなぁ翔琉、すげぇ男の顔してんなぁ」
ハハッて諒くんも笑った。

そっか、翔琉くんもひよりんが好きだったんだ。
ひよりん、相思相愛でよかったね!

嬉しくてホッとしたら、なんだか私も海で遊びたくなってきちゃった。


「私達も海行こっか」

「ん」

あっ、その前に…
「ごめんね、ちょっと日焼け止めを塗り直してくね」

「あぁうん、どうぞ」


荷物から日焼け止めを取り出して、テントの入口の日陰で、腕や胸元、脚などに日焼け止めをしっかりぬりぬりと伸ばしていく。

あ、背中…どうしようかな…
さっきはひよりんにお願いしたけど、今は諒くんしかいないもんね…


「どうかした?大丈夫?」

動きが止まった私に、諒くんが声をかけてきた。

「あっ、うん、ちょっと背中が塗りにくいなぁって…」

「俺でよければ塗ろうか?」

「…いいの?」

「俺はかまわないよ」
諒くんが眩しい笑顔で答えてくれた。

「ごめんね、じゃあお願いします」

「ん…やるよって言っといてなんだけど、どんな感じで塗ればいいんだろ。ゴメン、したことなくて」

そうなんだ、彼女と海とか行ってないのかな…

チク

ん?チク?



「あ、そうなんだね。えっとじゃあ、こんな感じで…」

と、諒くんの手のひらに日焼け止めを出し、私の腕に当てて伸ばしてもらった。

「…こんな感じでいいの?」

「うん、ありがとう、そんな感じで背中をお願いします」

「ふ、了解」

ツインテールが邪魔にならないように、前に持ってきて両手で掴む。


背中で感じる大きな手…にドキドキする。

…つー…と背筋を指でなぞられる感覚にゾクリとして「んっ…」と声が出てしまった。

ハッ!…聞かれて…ないよね…
もうこれだけでドキドキするって…よほど枯れてるんだな、私…



「…よし。こんな感じで大丈夫かな」

「あっ、ありがとう。慣れないことさせちゃってごめんね」

「ふ、麻依さんで初体験しちゃった」

なんてイケメンが無邪気な笑顔で意味深な言い方をするから…ホント枯女にとってはタチが悪い。

「もっもう、どういう言い方してるの」

「ハハッ、でも事実しか言ってないし」

「もぉ…」

「じゃあ、行く?海」

「ん、そだね。行こっか」



砂浜を歩きながら諒くんが私を見て言う。
「麻依さん、今日はすごく小さく見えるね。…あぁ、いつもの目線の高さじゃないから」

「あ、ほんとだ、いつもより諒くんが高い」

「…なんか抱きしめたらすっぽり入りそうだよね、小さくて可愛い…抱きしめてみてもいい?」

「ん?…ナナエマコンビでもいるの?」
キョロキョロと辺りを見回す。

「いないよ。…俺が素でそう言ったらおかしい?」

「えっ、素で?いや…全然おかしくはないけど、さっきの甘いノリみたいだったし、てっきりナナエマコンビがいたのかと…」

「で、いい?抱きしめても」

ん?

う…うわあぁぁぁ!
イケメンが妖艶な笑顔でそんなこと言わないでえぇぇ!

バクバクバクバク…
しっ心臓が耐えられない!

「あの…今はちょっと…」

「じゃあ後でならいいの?」

ひゃあぁぁぁぁぁ!
なんでそうなるのおぉ!

ダメ…心臓が回って目が飛び出そう!
あぁ違う逆逆!目が回って心臓が飛び出そうなんだってば!
…もう日本語すらままならない…


胸を押さえて言う。

「あっあの、心臓がもたないので…この話はまた後で…」

「ん、じゃあ後に持ち越しね」


ううぅ…イケメンの破壊力、枯女の私にはとにかくハンパないんですけど…

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