太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
「彼が私の後任で、4月からソレイユの新しい支配人となる、佐伯 諒(さえき りょう)くんだ」
紹介された彼が前に並ぶスタッフを見渡し挨拶する。
「佐伯 諒といいます。ソレイユについては、これから1か月弱ではありますが、中沢支配人についてしっかり勉強して参りますので、どうぞよろしくお願いいたします」
確かに聞いていたとおり…
いえ…それ以上…
細身っぽく見えるけど肩幅はしっかりあってスーツをきれいに着こなしている。
ただ細いだけではこういう整ったスタイルにはならないから体を鍛えているのだろうか。
背は…180㎝以上あるよね。175㎝の中沢支配人と比べるとそれくらいに見える。
シャープなフェイスラインに二重で優しげにも見える切れ長の目の上にはキリリとした眉。
スッとした鼻筋に、薄めの唇。
前髪は目にかからない長さの軽い七三で、サイドと後ろはスッキリしており、黒髪で清潔感があり好印象を持たれる髪型。
なんて……
初見の人物を瞬間的にここまで観察したのも……
素敵だと感じたのも……
初めてかもしれない……
それくらい目を奪われる彼は、本当にこんな人いるの?っていうくらい、顔立ちもスタイルも全部完璧で、まさに王子様。
更には耳に心地よいバリトンボイス…
この容姿とこの声で愛の言葉の一つでも囁けば、女性はイチコロだろう。
真偽がどうであれ、とっかえひっかえの噂が出るのも頷ける。
口角を薄く上げたキレイな顔立ちで話し終えると、佐伯さんは綺麗に一礼した。
スタッフ達から拍手が起こる中、私はチラリとある人を見た。
そこらのイケメンはイケメンと呼ばない〝極上イケメン〞好きで有名な調理部のマドンナ、上原(うえはら)カナさん(38歳、中学生と高校生の息子を持つママさん)だ。
その彼女のスマホの待受に鎮座しているのが、彼女がこよなく愛する金髪緑眼の極上イケメン『オーサ様』なのだが、佐伯さんを見るカナさんは『オーサ様』を見る時同様の恍惚とした表情。
彼女のこの様子からするに、佐伯さんは極上イケメンの部類に入るのだと推測する。