太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~

その食事、危険です/side諒

あーもうイライラする。
せっかくのご褒美デートだったってのに。
麻依にあんな悲しい顔させてまで来ることじゃなかったな…

はぁ…麻依…ほんとゴメン…


つか、待ち合わせってこの公園…だよな?


俺の名刺を見たのか親御さんから聞いたのか、知らない番号の着信電話に出たらユリナの声。
そして、こう言われたんだ。

『諒ちゃん、会ってくれるなんて嬉しい!夜7時に駅前中央公園で待ってるね』


…なんで公園?
待ち合わせなら駅とか店でいいはずだろ?


そんな疑問を持ちながら足を進め、街灯の下だというのに薄暗い公園の入口まで来た。


ここ…だよな。
時間もそろそろか…と腕時計に目を移した時。

「諒ちゃんッ!はいコレ、おいしいから食べて!」

「うわあっ」


いきなり後ろから声がすると、俺が驚いた事には目もくれずに横からユリナがヌッと出てきた。


マジで驚いた。心臓が止まるかと…
つかこんなとこで死にたくねぇよ。


その彼女にいきなり差し出されたのは、透明のラッピング袋に入った、濃いピンクだか紫色だかのマカロン2つ。
薄暗い街灯のせいで色も見た目もよくわからないが、食事前のこの時間に、しかも、いきなりマカロン。

どう考えても怪しさ満点だが、食べないと移動させてもらえない雰囲気のため、とりあえず一口かじる。


う…薔薇200%

なんだこれ…
薔薇の香りがキツすぎる…
生地やクリームに練り込んだ感じではなさそうな、強いローズエキス?香料?を後から染み込ませた感じのキツさ。
そして、甘さの中に、たまに感じる苦…味?
軽めに言って、クソ不味い。

マカロン好きな俺だから言える。
ズバリ!コレはお店で売っているモノではない!
いや、もとはお店のモノかもしれないが、この薔薇のキツさは後から付け足されたものだと思う。

従って…怪しさ500%

だが、食べないという選択肢はないわけで…飲み込むように一つだけ食べた。

大好きなマカロンなのに…
不味いと思いながら嫌々食べる日が来るだなんて思いもしなかった…
ごめん、マカロン…


そんな俺の心の葛藤を知らないユリナに「もう一つは?食べないの?」と聞かれたが、食事前だからやめておく、と言うが早いかそそくさと鞄に詰め込んだ。

〝危険〞

この言葉しか思いつかない。


「じゃあ、食事でもしようか」

…とりあえずここを離れたくて公園を出たはいいが、さて、どこで食事をするかな…


ピリリリ、ピリリリ…

電話か……ん?翔琉だ。
オフ時に翔琉から電話なんて珍しいな…急な仕事か?


「ごめん、仕事の電話」と言い残し、ユリナから離れた。



「翔琉?どうした?」

『あっ諒さん、今いっスか?あの女と一緒なんスよね?』

「あぁ、ユリナといる。これから食事をしようと駅前から移動中だけど」

『ちなみにどこへ?』

「それがまだ決めてなくて迷ってる」

『じゃあラピスニューグランドホテルに行って下さい』

「え?ラピス?…何でそんな高級なとこ…」

『麻依さんが、今日8時からラピスの最上階のレストランで横田副支社長と仕事の話で食事をすることになったって、陽依に連絡が』

「…え?それ本当か?」

『はい、さっき陽依が麻依さんに電話して確認しましたから』

「…そうか、わかった。ありがとう、じゃあ俺もラピス行くわ」

『諒さん、アイツ…横田はマジでヤバい奴なんで、麻依さんが部屋に連れ込まれないように、レストランの出口で見張ってた方がいいです』

翔琉の声がマジだ。
それにいつもの喋り方じゃないしな。

「そんなにヤバいのか?」

『はい、連れ込まれた女の子、俺が知ってるだけでも数人いますから。でも副支社長って肩書きで黙っているよう脅したり、あとは、同意したと言われてしまえば証拠もないから罪にも問えなくて、泣き寝入りです』

「…なんだそれ…」

『しかも、たぶん…薬使ってます、睡眠導入剤か何か。俺が話を聞いた子は、食事のあと急に眠くなって、気づいたらホテルの部屋だったみたいです』

「マジでヤバいな…わかった、8時から、最上階のレストランだな」

『はい。俺達も行きますから』

「えっ、陽依さんと一緒なんだろ?いいよ、無理するな」

『いえ、俺もだけど、陽依がすげぇ心配してるから』

「そうか…悪いな、ありがとう。多い方が俺も安心する。ただ、こっちはユリナを何とかしなきゃならないから…俺は一人になり次第、だけど早めに最上階に行くから…悪いけどよろしく頼む」

『はい、俺達はすぐに行けますから』

「ありがとう。じゃあ、また後で」

『ハイ』




…麻依…何で俺に言わねぇんだよ…

…てか、その前にユリナをなんとかしないとな…

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